本研究は、ヒト腸内細菌の活動を生きたまま評価することにより宿主健康度の推定を行うものである。現在検討している項目は、(1)腸内細菌のエネルギー要求量、 (2)糞便性状、 (3)宿主消化管運動の電気生理的解析である。(1) 前年度に引き続き、胃がんモデルマウスから採取した糞を利用し、消化管機能が破綻した状態における腸内細菌のエネルギー要求量の解析を進めた。野生型マウスとの比較を行い、顕微鏡下で目視すると明らかな違いが分かるが、その違いを数値化するために、具体的に腸内細菌の形態やエネルギー要求量の解析方法の検討を進めている。現在、動物実験施設の改築工事に向けて飼養数の削減が求められており、マウス交配に制限があり、3種類全ての遺伝子欠損を有する胃がんマウスの誕生率が少ない状況となっている。(2) 主に、胃がんモデルマウスの糞を使用した実験を進めており、糞便重量は健常マウスよりも減少しているが、pHなどその他の性状については、ヒト糞便用に購入した機器ではサイズ不適合のため測定できず、実測に至っていない。(3) 胃腸電図は覚醒下のマウスから記録することが難しいため、ヒトで実施している。現在、胃腸電図記録の波形解析を進めている。また、現在用いている据え置き型のような記録機器では長時間拘束されるため、普通に生活している状態よりも副交感神経有意の状態の記録になっていると考えられる。この為、実際上は携帯型機器の使用が望ましいと考えられた。今後、胃がんモデルマウスにおける結果をヒト腸内細菌から得られた結果にフィードバックし、解析を進めると共に、滞っている論文投稿を行う方針である。
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