研究課題
肝臓脂肪蓄積を特徴とする非アルコール脂肪性肝疾患(NAFLD)が増加している。NAFLDは、非アルコール性の肝臓脂肪蓄積を特徴とする疾患である。NAFLDの予防・治療に食事療法が不可欠だが、タンパク質摂取が食事療法において果たす役割は解明されていない。大豆タンパク質など特定のタンパク質摂取が肝臓脂肪蓄積を減少させることが報告され、摂取するタンパク質の種類によってNAFLD食事療法の予防・改善効果が異なる可能性が示唆される。しかしながら、詳細なメカニズムは不明であり、NAFLD食事療法として活用されていない。本研究課題では、食事中タンパク質のNAFLD予防・治療への有用性およびそのメカニズムの解明を目的とする。本年度は、新規タンパク質機能素材である緑豆タンパク質の肝臓における脂肪合成への作用解析を行った。緑豆タンパク質は、大豆タンパク質中の活性画分を豊富に含んでおり、肝臓脂肪蓄積の抑制を介したNAFLD予防効果が期待できる。マウスへの緑豆タンパク質給餌は、高脂肪食による肝臓への脂肪蓄積量を低下させた。この緑豆タンパク質による肝臓脂肪蓄積の低下作用は大豆タンパク質給餌による効果よりも強かった。また、緑豆タンパク質給餌マウスにおける肝臓脂肪合成酵素Fasn、脂肪酸不飽和化酵素Scd1およびこれらの転写因子であるSrebp1の遺伝子発現がコントロールマウスに比べ低下していた。以上のことより、緑豆タンパク質は肝臓における脂肪合成を抑制することにより肝臓脂肪蓄積量を低下させることが明らかとなった。今後、高脂肪高コレステロール食給餌によるNAFLDモデルを用いて緑豆タンパク質のNAFLDへの作用およびそのメカニズムの検討を行う。
2: おおむね順調に進展している
本研究課題には、NAFLD予防作用を有する食品タンパク質素材の同定が必要不可欠である。現在までに緑豆タンパク質が肝臓脂肪蓄積を抑制することを見出し、NAFLDを予防する食品タンパク質素材候補として緑豆タンパク質を同定できた。このことは、本研究課題を大きく進展させた。
本研究計画では、食事中タンパク質の末梢性・中枢性セロトニンを介したNAFLD予防・改善作用の解明を目的として、1)食事中タンパク質によるセロトニン作用を介したNAFLD予防・治療への有用性の検討、2)末梢性セロトニンのNAFLD予防作用とそのメカニズムの解明、3)中枢性セロトニンのNAFLD予防作用とそのメカニズムの解明、に取り組む。現在までに、緑豆タンパク質の肝臓脂肪蓄積作用を見出していることから、緑豆タンパク質がNAFLD予防作用を有することが期待できる。また、緑豆タンパク質の作用メカニズムとして末梢性・中枢性セロトニン作用を検討する予定である。
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