研究課題/領域番号 |
16K00850
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研究機関 | 愛知教育大学 |
研究代表者 |
早瀬 和利 愛知教育大学, 教育学部, 名誉教授 (10144180)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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キーワード | GABA / 脳タンパク質合成 / 成長ホルモン / グレリン / ラット |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,脳タンパク質合成を例として,脳機能におけるタンパク質非構成アミノ酸であるGABAの役割について,調節メカニズムを明らかにすることである。今年度は,GABAによる脳タンパク質合成の調節における成長ホルモンの役割をさらに明らかにするため,GABAの投与方法並びに消化管ホルモンのグレリンの体内濃度について検討した。 24週齢の雄ラットをmeal-feedingに慣れさせた後3群に分け,2群には20%カゼイン食,残りの1群には20%カゼイン+0.5% GABA食を単回摂取させ,3時間後に解剖した。20%カゼイン食摂取群の1群には,30 mg/100gBWのGABAを,残りの2群には生理的食塩水を,解剖前1時間に静脈注射した。血中成長ホルモン濃度,血中グレリン濃度をELISA法により決定した。 GABAの投与方法として,静脈注射による投与では,血中成長ホルモン濃度は変化せず,食餌から20%カゼイン+0.5% GABA食として投与した場合は,GABA摂取によりこれまで同様有意に血中成長ホルモン濃度が増加した。同様に血中グレリン濃度についても,食餌よりGABAを投与した時のみ,有意に増加した。グレリンは,成長ホルモン分泌促進作用が知られており,以上の結果から,GABAによる脳タンパク質合成速度の増加において,GABAが体内グレリン濃度を上げることにより,成長ホルモンの分泌を増加させ,脳タンパク質合成を促進する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書で提案した平成29年度の研究計画は,「成長ホルモンによる脳タンパク質合成の調節におけるGABA投与方法の影響」であり,成熟ラットを用い,meal-feedingに慣れさせたラットに静脈注射と食餌(20%カゼイン+0.5% GABA食)の2通りでGABAを投与し,GABAによる脳タンパク質合成の調節メカニズムをさらに明らかにすることである。 計画通りに順調に研究が進められ,研究実績の概要に示したとおり,GABAの投与方法として,注射による投与では,血中成長ホルモン濃度は変化せず,食餌から投与した場合は,GABA摂取によりこれまで同様有意に血中成長ホルモン濃度が増加した。同様に血中グレリン濃度についても,食餌よりGABAを投与した時のみ,有意に増加した。GABAによる脳タンパク質合成速度の増加において,GABAが体内グレリン濃度を上げることにより,成長ホルモンの分泌を増加させ,脳タンパク質合成を促進する可能性が示唆された。 研究計画は順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は,平成29年度は順調に進展した。 次年度は,グレリン受容体阻害剤を使用することで,GABAによる成長ホルモン分泌促進作用におけるグレリンの役割をさらに明らかにしていく。 本研究実施により,GABAによる脳タンパク質合成の調節機構において,成長ホルモン分泌を促進する消化管ホルモンのグレリンが関与しているかどうか明らかになると思われ,タンパク質,アミノ酸栄養による脳タンパク質合成の調節について理解が深まると考えられ,脳機能に対するタンパク質非構成アミノ酸の栄養の寄与について飛躍的に貢献できる。 今後,その成果を学会での発表,学術論文誌への成果発表を進めたい。
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