本研究の目的は,脳タンパク質合成を例として,脳機能におけるGABAの役割について,調節メカニズムを明らかにすることである。24週齢の雄ラットを使用した。 平成28年度は,GABAによる脳タンパク質合成の促進作用における甲状腺ホルモンの役割を検討し,プロピルチオウラシル摂取による甲状腺機能低下ラットでもGABAの効果は消失せず,GABA摂取により脳タンパク質合成速度は有意に増加した。 平成29年度は,成長ホルモンの役割を明らかにするため,GABA投与方法並びに成長ホルモン分泌促進作用が知られているグレリンの役割を検討し,GABAの静脈注射では血中成長ホルモン濃度は増加せず,GABAを食餌に添加し投与すると,血中成長ホルモン濃度並びに血中グレリン濃度が有意に増加した。 平成30年度の最終年度の研究では,GABAによる血中成長ホルモン増加作用におけるグレリンの関与をさらに明らかにするため,グレリン受容体アンタゴニスト Lys3-GHRP-6をあらかじめ投与したラットで血中成長ホルモン濃度,血中グレリン濃度へのGABA摂取の役割を検討した。ラットをmeal-feedingに慣れさせた後3群に分け,1群にはLys3-GHRP-6,2群には生理的食塩水を静脈注射後,生理的食塩水投与の1群に20%カゼイン食,Lys3-GHRP-6投与並びに生理的食塩水の残りの1群に20%カゼイン+0.5% GABA食を単回摂取させた。血中成長ホルモン濃度,並びにグレリン濃度は,GABA摂取により有意に増加し,Lys2-GHRP-6の事前投与で,血中成長ホルモン濃度へのGABAの影響は消失した。 以上の結果より,GABAによる脳タンパク質合成の増加において,甲状腺ホルモンは関与せず,GABAが体内グレリン濃度を上げることにより成長ホルモンの分泌を増加させ,脳タンパク質合成を促進する可能性が示唆された。
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