研究課題/領域番号 |
16K00851
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
東川 史子 広島大学, 医歯薬保健学研究科(薬), 特任准教授 (70346534)
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研究分担者 |
杉山 政則 広島大学, 医歯薬保健学研究科(薬), 共同研究講座教授 (30106801)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 乳酸菌 / メタボリック症候群 / ヒト試験 / 血糖値 / 肥満 / 機能性食品 |
研究実績の概要 |
当研究グループが龍眼という果物から単離した植物乳酸菌Pediococcus pentosaceus LP28(以下LP28と略す)は、これまでに、ヒトおよびマウスにおいて、抗肥満作用を示すことが明らかとなっている。本研究では、次のステップとして、LP28の糖代謝系への影響を中心に検討し、LP28によるメタボリック症候群の予防・改善への可能性を探ることを目的としている。 平成28年度は、細胞培養系を用いた実験によって、LP28の機能性の関与成分が細胞質画分に存在することが示唆された他、次年度以降の実施を目指してヒト試験の準備、主にLP28の試験食の準備を進めた。それを受けて、平成29年度は、糖負荷試験 2時間値が境界域(140 mg/dL以上200 mg/dL未満)かつHbA1cが6.5%未満である糖尿病境界域者40名を対象とし、LP28が糖代謝に及ぼす影響を評価する臨床研究を実施した。年度末に終了したため、結果解析は今後進める。また、動物実験では、LP28を長期摂取させることにより、食後血糖値上昇抑制が認められるか否かについて検討を行った。9週間に渡って、様々な投与量でLP28を経口投与した肥満誘発マウスを、コントロールの肥満マウスと比較すると、空腹時血糖値がLP28の投与量が多いほど低下の傾向を示した。糖負荷試験2時間値や負荷後の血糖値のAUCについては、投与量依存性は認められなかったものの、 空腹時血糖と同様に、それぞれ低下傾向が認められた。以上のように、LP28の長期摂取により、 肥満マウスの空腹時血糖値、 糖負荷後2時間値、 及び糖負荷後の血糖値のAUCのいずれもが低下傾向を示したことから、 LP28は糖代謝改善作用を持つ可能性が高いことが示唆された。今後さらにこの点についての検討を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、培養細胞を用いてLP28の保健機能性の関与成分について実験を進めるとともに、ヒト試験実施に向けた準備を行った。平成29年度は動物実験で糖代謝系への影響を検討し、LP28の長期摂取が、肥満抑制に加えて、空腹時血糖や食後血糖にも良い影響を及ぼす可能性を見出した。また、耐糖能異常を持つ人を対象としたヒト試験を予定通り実施できたこと等から、研究はおおむね順調に進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、29年度末に終了したヒト試験の結果解析を進め、耐糖能異常に対するLP28の効果について検証する。また、糖尿病モデルマウス等を用いて、LP28長期摂取による各種血液生化学パラメーターの変動及び各種遺伝子発現変動等について検討する他、LP28の単回投与・継続投与後のインクレチン等の変動についても併せて検討を進める予定である。
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