研究課題/領域番号 |
16K00852
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
橋本 剛 香川大学, 医学部, 助教 (80380153)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 非アルコール性脂肪性肝炎(NASH) / 脂肪肝 / 肥満 / ミフェプリストン / グルココルチコイド / 受容体遮断薬 / PPARγ受容体 |
研究実績の概要 |
我が国の非アルコール性脂肪肝の罹患者数は、諸外国と同様に成人の10~30%の割合で存在すると推計されている。非アルコール性脂肪肝は40歳代以降、加齢とともに急速に増加するが、自覚症状がほとんどないため気づきにくい。また、脂肪肝の一部は酸化ストレスが加わることで非アルコール性脂肪性肝炎(NASH: Nonalcoholic steatohepatitis)を発症し、肝細胞が線維化して肝硬変や肝がんへと長い年月をかけて進行するため、NASHの予防は、近年非常に注目された病態である。NASHはメタボリック症候群の肝臓における表現型の一つではあるが、肥満の程度が比較的軽い本邦においてもNASH発症率が増加傾向にある。そこで、NASH発症の分子機構をさらに理解するための最適な非肥満非アルコール性脂肪肝モデル動物の開発が必要である。 通常食で飼育したマウスにグルココルチコイド受容体遮断薬として知られるミフェプリストンを与えると非肥満性NASH様肝病変を早期に惹起するとした結果を得た。また、培養肝細胞に対してミフェプリストン刺激を行うと、肝細胞における脂質代謝に影響を及ぼすMGAT-1遺伝子の有意な発現増加が観察された。これらの知見は、ミフェプリストンが新たな非肥満非アルコール性脂肪肝モデル動物となり得るとともに、脂肪肝の発症メカニズムの解明および新たな治療法の開発に寄与するものであると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予備的知見において、ミフェプリストン混和通常食を14週間与えた非肥満マウスは、NASH様肝病変を呈することを確認している。そこで、肝実質細胞のモデルであるHepG2細胞にミフェプリストンを単独刺激すると、脂質代謝に影響を及ぼすMGAT-1遺伝子の有意な発現増加が観察された。さらに、ミフェプリストンがPPARγ受容体の活性化を引き起こすとの報告もあることから、PPARγ受容体遮断薬(T0070907)との共存実験を行った。その結果、ミフェプリストン刺激によるMGAT-1遺伝子発現には有意な変化は認めらなかったものの、対照群としてのT0070907単独刺激でHepG2細胞の細胞死が誘導されるといった結果が得られた。 申請時における初年度の研究計画は、ミフェプリストン混和通常食誘発性非肥満非アルコール性脂肪肝モデル動物の確立であったが、他の研究計画との進捗状況を考慮して培養細胞を中心としたものに変更したが、当初の平成28年度の研究実施計画は概ね遂行できたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
肝実質細胞モデル(HepG2細胞)を用いた平成28年度の結果を踏まえ、平成29年度は肝非実質細胞のモデルであり、類洞周囲脂肪細胞とも呼ばれる肝星状細胞に対するミフェプリストンの影響を検討する。また、初年度で実施することができなかった、ミフェプリストン誘発性非肥満非アルコール性脂肪肝モデル動物を確立するため、ミフェプリストンの投与濃度および飼育期間の最適化を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
肝星状細胞は代謝が非常に高いため、培養の初期段階から2日に1回の頻度で培地交換する必要があり、次年度における培養細胞の培地および血清の購入費用に充てる目的で予算を繰り越すことにした。さらに、初年度に行うことができなかったモデル動物を確立するため、ミフェプリストン混和飼料の作成および動物の購入費用に研究費としても次年度に繰り越すことにした。
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次年度使用額の使用計画 |
ヒトまたはマウス由来肝星状細胞は、一本17万円ほどと高価である。さらに、培養細胞の培地および血清の購入、培養備品の購入費用として研究費の45%を充てる。次に重要な研究計画が、ミフェプリストン誘発性非肥満非アルコール性脂肪肝モデル動物を確立であるため、ミフェプリストン混和飼料の作成および動物の購入費用として、研究費の50%程度を充てる。さらに、当該研究課題に関する研究成果発表を予定し研究費の5%を旅費に充てる。
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