グルココルチコイド受容体遮断薬として知られるミフェプリストンを通常食に混和して、14週間マウスに与えると、体重増加が観察されない非肥満性の非アルコール性脂肪性肝炎様の肝病変を呈する。さらに、肝臓の組織切片をBodipy493/503を用いて染色して脂肪滴を検出すると、ミフェプリストン用量依存的にBodipy陽性像が増加し、脂肪滴が増加していることが明らかとなった。また、細胞内の脂肪滴を包含するための中間系線維であるビメンチンを免疫染色したところ、ミフェプリストン用量依存的に脂肪滴の周囲に強く発現しているとの結果が得られた。そこで、この脂肪滴が肝臓の如何なる細胞種において蓄積しているのかを検討するため、培養細胞を用いてミフェプリストン刺激を行い、脂質代謝に影響を及ぼす因子について検討した。 肝実質細胞として代表的なHepG2培養肝細胞に対してミフェプリストン刺激を行うと、脂質代謝に影響を及ぼすMGAT-1遺伝子の有意な発現増加が観察された。一方、肝非実質細胞である肝星状細胞に対してミフェプリストン刺激を行うと、ビメンチンタンパク質の有意な発現増加が観察された。さらに、HepG2培養肝細胞および肝星状細胞に対して個別にミフェプリストンを長期刺激して脂肪滴の形成能を検討したところ、コントロールと明らかな差は認められなかった。 ミフェプリストンが脂肪滴を形成する機序には、培養細胞系と臓器である肝臓とは異なる可能性が示唆された。
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