研究課題/領域番号 |
16K00853
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
渡邊 健 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 助教 (00346909)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | インフルエンザウイルス |
研究実績の概要 |
抗ウイルス薬開発には多額の費用がかかる一方で、ウイルスは容易に薬剤耐性を獲得する。特にインフルエンザウイルスのようなRNAウイルスは変異が早く、突然耐性ウイルスが広まることで価値を失ってしまう。例えばノイラミニダーゼ(NA)阻害薬タミフルは上市からわずか6年後の2007~2008年には大半のウイルスがタミフル耐性となった。このような状況からインフルエンザ制御・征圧のためには ① 耐性ウイルス出現による既存薬の無効化・短命化を防ぎ、また新たな耐性ウイルス出現にも対応できる方法を開発すること ② HIVのART療法のように異なる作用機序をもつ複数の薬剤を組み合わせて耐性ウイルスの出現を防ぐために、従来のノイラミニダーゼ阻害作用とは異なる作用機序を持つ抗インフルエンザ薬の開発が必要である。 本研究課題では薬剤耐性ウイルス出現を克服するために、従来の抗ウイルス薬と併用が可能な、新規作用機序をもつ化合物(成分)を見出すことを目指している。その化合物(成分)が食品由来であれば、より安全性が高いと考えられる。本年度は1.NA阻害剤とは異なる作用機序をもつ化合物を見出し、その作用機序について検討を行った。その化合物はインフルエンザウイルス遺伝子本体(vRNP)を構成するNP蛋白質に作用することがわかった。2,ピーナッツ薄皮抽出液を作成し、抗インフルエンザウイルス活性を見出した。その作用機序は殺ウイルス活性またはウイルスHA蛋白質の活性阻害であると考えられた。1,2の化合物・成分ともに既存の抗ウイルス薬とは異なる作用機序をもつとかんがえられる。従って既存の抗ウイルス薬(NA阻害剤)と併用する事により相乗的に作用し、耐性ウイルス出現を抑制できると考えられる。この点について平成29年度に検討を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画ではインフルエンザウイルスの薬剤耐性ウイルス出現を抑制するストラテジーを構築するためにノイラミニダーゼ阻害薬とは異なる作用機序をもつ成分ないしは化合物を見出すことがまず必要である。その点において28年度は順調に研究が進展したと考える。
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今後の研究の推進方策 |
28年度の研究成果で見出した成分および化合物について既存の抗ウイルス薬との併用により相乗効果を示すかを確認する。また、臨床分離株やB型インフルエンザウイルスを含む様々なウイルスに対する有効性を確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では初年度蛍光顕微鏡を購入する予定で平成28年度の物品費を多額に計上していたが、当該年度中に顕微鏡を借用により利用できる環境が整ったため購入を見送った。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は物品費での試薬購入とともに研究を一層推進するために実験補佐員を雇用し、論文投稿費用、英文校正費用、学会発表の旅費に研究費を充てる計画である。
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