本研究は「食品の機能成分と抗ウイルス薬の併用:薬剤耐性の克服とインフルエンザ予防は可能か?」と題して、複数の作用機序をもつ化合物(薬)を併用することで薬剤耐性ウイルス出現を抑制、ひいてはインフルエンザ予防につなげることを最終目標として研究を進めた。インフルエンザウイルスのようなRNAをゲノムとしてもつウイルスは真核細胞生物のようなゲノム複製時の読み間違いを正す機構がないため、ゲノムに変異が入りやすくそれがウイルス感染症を征圧できない大きな理由の一つとなっている。たとえばHIV感染症であるAIDSの治療には作用機序の異なる複数の薬剤を組合わせるのが標準治療となっている。単剤の使用ではたとえ非常に利き目の高い薬剤であっても耐性ウイルスの出現は避けられないとされており、実際最新の抗インフルエンザウイルス薬ゾフルーザは非常に高頻度で薬剤感受性の低下した変異ウイルスが患者より分離されている。本研究ではこれまでに1.インフルエンザウイルス核タンパク質 2.インフルエンザウイルスポリメラーゼ活性阻害2種類 という、従来の抗インフルエンザ薬とは全く作用機序の異なる化合物を複数見い出した。食品や天然物では3,落花生薄皮 4,大黄甘草湯 に抗インフルエンザ作用を見出しており、以上1~4について論文発表しいる。落花生薄皮抽出液はとくに従来のノイラミニダーゼ阻害薬との併用により相乗効果があることを見出している。以上により、培養細胞レベルで、食品の機能成分と抗ウイルス薬の併用による薬剤耐性の克服にむけた、ひとつのストラテジーをしめすことができたと考えられる。
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