研究課題/領域番号 |
16K00855
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研究機関 | 新潟県立大学 |
研究代表者 |
渡邊 令子 新潟県立大学, その他, 名誉教授 (70141348)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 米胚乳タンパク質 / 米糠タンパク質 / 肥満2型糖尿病 / 糖尿病性腎症 / メタボローム解析 / 尿中代謝物質 / ZDFラット |
研究実績の概要 |
平成28年度に、肥満2型糖尿病モデルZucker diabetic fatty(ZDF)ラットにタンパク質源として米胚乳タンパク質(REP)と米糠タンパク質(RBP)、およびコントロールとしてカゼイン(C)を用いて調製した飼料を10週間給与した飼養試験最終週の尿を試料として、CE-TOF MSによるメタボローム解析を行い、3群間で比較検討した。その結果、それぞれの代謝物質プロファイルに顕著な差があることが示された。 そこで、本年度はREP群とC群、RBP群とC群、各2群間で追加解析を行った。REP群とC群の比較では、絞り込まれた代謝物質数は239で、86個の代謝物質でC群と比較してREP群で有意な変動がみられ,その中でもカルニチン関連代謝物質、芳香族アミノ酸とその中間代謝物質等いくつかの代謝系で複数の代謝物質の変動が顕著であった。一方、RBP群とC群の比較では絞り込まれた代謝物質数は255で、113個の代謝物質でC群と比較してRBP群で有意な変動がみられ、分岐鎖アミノ酸とその中間代謝物質、芳香族アミノ酸とその中間代謝物質、および尿素回路関連の代謝系で複数の代謝物質等の変動が特徴的であった。さらに、REP群とRBP群のC群に対する変動倍率を比較すると、内因性のNO合成酵素阻害物質とされるADMA(asymmetric dimethylarginine)や、腎機能評価の新規バイオマーカーとして期待されているSDMA(symmetric dimethylarginine)が、RBP群で有意に高いのに対しREP群では有意に低く、両群の腎症進行抑制効果は類似しているが、その進行抑制機構には大きな差異があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
REPとRBPの2型糖尿病に対する改善効果、脂肪肝抑制作用、糖尿病性腎症進行抑制作用、および慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常に対する影響等ついて、ZDFラットを用いて長年に渡り研究を進めている。ZDFラットは自然発症肥満2型糖尿モデルゆえ、モデル動物の中でも糖尿病やその合併症の進行状態における個体差が大きいことが知られているが、8~10週間に渡る長期試験にもかかわらず、本試験においてもREPとRBPによる脂肪肝抑制作用、糖尿病性腎症進行抑制作用等の各種測定項目結果の再現性が大変良好で、これらの尿試料の代謝物質プロファイルから、期待以上の情報が得られた。さらに、追加解析によりREPとRBPの各作用特性に関する解析データも得られた。
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今後の研究の推進方策 |
1.REPとRBPではタンパク質組成が全く異なるので、平成28年度に実施した尿メタボローム解析データと本年度に実施した追加解析データを用いて、引き続き代謝物質プロファイルの詳細な検討を行う。これは、尿中の新規腎疾患マーカー物質の探索にもつながり、腎疾患予防にも貢献できると考えている。さらに、同一試験系で過去に実施した肝臓のメタボローム解析データと、尿メタボローム解析データと照合して、REPおよびRBP摂取による脂肪肝抑制作用と糖尿病性腎症進行抑制作用のメカニズムの関連について検討する。
2.飼養試験終了時に採取した凍結保存サンプル(尿、腎臓、肝臓など)を用いて、尿中代謝物質プロファイルをみながら、腎機能関連遺伝子群の体系的挙動やREPとRBPによる発現変動などについて検討する。
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