研究課題
肥満2型糖尿病モデルZucker diabetic fatty(ZDF)ラットにおいて、主食用白米から調製した米胚乳タンパク質(REP)や米糠タンパク質(RBP)の長期摂取が、糖尿病、肝臓への脂質蓄積、および腎症の進行を抑制することを報告してきた。しかし、その作用機構は未解明である。そこで本研究では、尿中代謝物質(産物)プロファイルの解析を中心としてREP・RBP摂取有効性の作用機構解明を目的とした。ZDFラットにタンパク質源としてREPとRBP、およびコントロールとしてカゼイン(C)を用いて調製した飼料を給与した飼養試験最終週の尿を試料として、CE-TOF MSによるメタボローム解析を行い、比較検討した。その結果、REPとRBPでは尿中代謝物質プロファイルに顕著な差がみられた。REP群とC群の比較では、絞り込まれた代謝物質数は239で、86個の代謝物質でREP群に有意な変動がみられ、中でもカルニチン関連代謝物質の増加、芳香族アミノ酸とその中間代謝系で複数の代謝物質の変動が顕著であった。一方、RBP群とC群の比較では絞り込まれた代謝物質数は255で、113個の代謝物質でRBP群に有意な変動がみられた。カルニチン代謝関連物質は減少、トリプトファン代謝、および尿素回路系の関連代謝物質の変動が特徴的であった。これより、REPとRBPの肝臓への脂質蓄積や腎症進行に対する抑制効果は類似しているが、その抑制機構には大きな差異があることが示唆された。これらの結果は、尿中の新規腎疾患マーカー物質の探索にもつながり、腎疾患予防にも貢献できると考えている。作用機構のさらなる解明には、血液・尿の経時的メタボローム解析と、同時に肝臓と腎臓の遺伝子発現応答について詳細な検討が必要である。
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Journal of Nutritional Science and Vitaminology
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