研究課題/領域番号 |
16K00856
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
吉田 卓矢 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 助教 (80622448)
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研究分担者 |
熊谷 裕通 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 教授 (40183313)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 糖尿病性腎症 / 高脂肪食 / 脂肪蓄積 / エイコサペンタエン酸 |
研究実績の概要 |
本研究は、食餌中の脂質が慢性腎臓病における異所性脂肪の蓄積に与える影響を基礎的に解明することを目的としている。本年度は、過食により糖尿病を発症し腎症を合併する糖尿病性腎症モデルラットを用いて、高脂肪食により腎臓に中性脂肪が蓄積するメカニズムを検討した。最初に、高脂肪食を与えた糖尿病性腎症モデルラットの腎臓に異所性脂肪の蓄積を確認した。その後、腎組織中の脂肪酸合成や脂肪酸のβ酸化に関連する酵素の遺伝子発現量を調べた。高脂肪食を摂取した糖尿病性腎症モデルラットでは、脂肪酸合成に関連する遺伝子の発現は低下し、脂肪酸のβ酸化に関与する遺伝子発現量は増加傾向を示した。一方、脂肪酸の取り込みに関与するレセプターの遺伝子発現量は、コントロール群よりも増加していた。これらの結果から、腎組織中の異所性脂肪の蓄積には、腎組織中への脂肪酸取り込みの増加が関与することが考えられた。そこで、血中中性脂肪低下作用があるn-3系多価不飽和脂肪酸のエイコサペンタ塩酸(EPA)を高脂肪食に混ぜて糖尿病性腎症モデルラットに与えたところ、EPAは血中中性脂肪を有意に低下させ、さらに腎臓の脂肪蓄積も顕著に低下させた。また、腎臓の脂肪酸組成を調べたところ、高脂肪食を摂取した糖尿病性腎症モデルラットでは飽和脂肪酸が多かったが、EPAを摂取したラットでは飽和脂肪酸が減少した。これらのことから、糖尿病性腎症において、高脂肪食の摂取による腎臓の脂肪蓄積には、血中脂質の増加と腎組織中への脂肪酸取り込みの増加が関与することが示唆された。また、EPAは糖尿病性腎症による腎臓の脂肪蓄積抑制に有用であることが示唆された。今後はEPA摂取による腎臓の脂肪蓄積抑制が腎機能に及ぼす影響を検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度予定していた糖尿病性腎症モデルラットを用いたEPA摂取による実験は順調に実施できたためおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
糖尿病性腎症モデルラットにおいて、エイコサペンタエン酸が腎臓の脂肪蓄積を低下させたことが明らかになった。今後は腎臓の脂肪蓄積と腎機能の関係について実験を行い、研究成果を学会発表する。また、これまで得られた結果を論文としてまとめる予定である。
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