本研究は、夕食摂取時刻の違いが翌朝の耐糖能に及ぼす影響を検討することを目的とした。夕食を通常の時刻 (17: 30) に摂取する群、および遅い時刻 (22: 30) に摂取する群を設定し負荷後の代謝応答変化、さらに翌朝の食事負荷試験による代謝応答の変化を比較した。 昨年度の本試験(10名)から10名の被験者を追加した実験を行った(合計20名)。その結果、遅い時刻の夕食摂取群は早い時刻の夕食摂取群に比して、翌朝の血糖上昇量は有意に高値を示し、インスリン分泌の上昇量も有意に増加を示した。さらに、本要因として朝食摂取前の遊離脂肪酸濃度と有意な関係性を示す結果となった。また、遅い時刻での夕食摂取後の血糖上昇においても、高値を示した。 夜遅い時刻の夕食摂取は、摂取後と翌日の朝食後において耐糖能を悪化するという二重の負の作用をもたらすことが示唆された。過去の報告において、夜間の過食を特徴とする夜食摂取症候群の糖尿病患者は、他の糖尿病患者に比して、より肥満傾向であるうえ血糖のコントロールも悪く、糖尿病合併症罹患率も高いことが報告されている。すなわち、夜遅い時刻の食事摂取は、短期では食後高血糖、長期では糖尿病やメタボリックシンドローム発症リスクに影響を与える可能性がある。以上の結果より、食事の量や質に加えて、「タイミング」に重点を置いた栄養管理が重要であることが示唆された。現在、遅い時刻の夕食摂取における、遊離脂肪酸の上昇を誘発するメカニズムについて検討を実施している。
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