研究課題
本研究の目的は、レプチン抵抗性を改善する食品因子を探索・同定し、その抗肥満効果を培養神経細胞および動物個体レベルで実証することである。また、分子レベルでそのメカニズムを解明することで科学的根拠に基づいた高機能性食品創製のための基盤的知見の集積を目指している。平成28年度は、レプチンシグナルの解析を行うにあたり、ヒト神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞にretinoic acid (RA) を処理し、レプチン応答細胞への分化条件を検討した。その結果、100 nMのRAを5日または6日間処理した細胞において、レプチン受容体(Ob-Rb)、およびその下流のシグナル因子であるJAK2とSTAT3の発現上昇が観察され、神経様細胞への分化が確認された。そこで、SH-SY5Y神経様細胞にレプチンを処理し、レプチン作動性を評価した。ウェスタンブロッティングによる解析の結果、レプチン処理によってOb-Rb、JAK2およびSTAT3の顕著なリン酸化が認められた。また、定量逆転写PCRにより、レプチンシグナルによって発現が制御されているPOMCのmRNAレベルの有意な増加と、NPYとAgRPの有意な低下が確認された。さらに、PTP1B阻害剤であるオルトバナジン(V)酸ナトリウムがレプチンシグナルに及ぼす影響を検討し、レプチン非存在下においてレプチンシグナルの活性化を誘導することを明らかにした。現在は、当初の計画通りにPTP1B活性を阻害する食品素材および成分の培養神経様細胞に対するレプチン抵抗性改善作用の評価を実施している。
2: おおむね順調に進展している
平成28年度に計画していた研究項目(1)レプチン抵抗性モデル細胞の確立を達成し、平成28年度から29年度にかけて実施を計画していた項目(2)PTP1Bを阻害してレプチン抵抗性を改善する食品因子の探索と機構解析を実行中のため。
平成28年度から29年度にかけて実施を計画していた項目(2)PTP1Bを阻害してレプチン抵抗性を改善する食品因子の探索と機構解析を継続する。また、PTP1B阻害効果の高い食品因子を選抜し、研究項目(3)培養神経細胞を用いた食品因子のレプチン抵抗性改善作用の評価を実施する。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 1件)
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