研究課題
本研究の目的は、レプチン抵抗性を改善する食品因子を探索・同定し、その抗肥満効果を培養神経細胞および動物個体レベルで実証することである。また、分子レベルでそのメカニズムを解明することで科学的根拠に基づいた高機能性食品創製のための基盤的知見の集積を目指している。平成29年度は、PTP1B 活性を阻害する食品素材のスクリーニングを実施し、阻害活性の認められた食品素材の抽出物をSH-SY5Y神経細胞に処理し、レプチンシグナルに与える効果を検証した。その結果、アブラナ野菜に含まれるisothiocyanate(ITC)が、PTP1Bのシステインチオール基を修飾することで、活性を阻害することを見出した。そこでITCの一種であるphenethyl isothiocyanate(PEITC)が、レプチンシグナル増強作用を示すかどうかを検証したところ、PEITCは濃度依存的に細胞内PTP1Bを阻害し、Ob-Rb、JAK2およびSTAT3のリン酸化を誘導してレプチンシグナルをリガンド非依存的に活性することを見出した。STAT3は活性化すると核内へと移行し、摂食関連遺伝子の発現を調節する転写因子として機能する。そこで、PEITC処理した神経様細胞におけるSTAT3の局在を蛍光免疫染色法および細胞分画法によって解析した結果、PEITC濃度依存的なSTAT3の核内集積が観察された。さらに、STAT3に転写制御されている神経ペプチドのmRNAをqRT-PCR解析によって評価した。その結果、PEITC処理によってPOMCのmRNAレベルの有意な増加およびNPYとAgRPの有意な低下が認められた。平成30年度は、当初の計画通りに動物レベルにおけるレプチン抵抗性改善作用の評価を実施する。
2: おおむね順調に進展している
平成29年度に計画していた研究項目(1)レプチン抵抗性モデル細胞の確立を達成し、平成28年度から29年度にかけて実施を計 画していた項目(2)PTP1Bを阻害してレプチン抵抗性を改善する食品因子の探索と機構解析を実行中のため。
平成30年度に実施を計画していた項目(4)肥満モデルマウスを用いた食品因子の抗肥満効果の検証を実施する。同定した食品因子(PEITC)を添加した高脂肪食をマウスに摂食させ、その抗肥満効果を実証する予定である。
当初予定していた高脂肪食負荷マウスを使用した高肥満効果の他に、肥満自然発症モデル KK-Ay マウス等を使用した検討も行う予定である。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (13件)
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