研究実績の概要 |
最初に食品の1つであるポリフェノールの抗動脈硬化作用機序について検討した。ポリフェノールのフラボノイドであるアントシアニンは吸収された後、プロトカテク酸(PCA)に代謝される。PCAの抗動脈硬化作用の機序に血管内皮のマクロファージからのコレステロールをABCA-1やABCG-1のような輸送体を介して逆転送する作用があることが報告されている。私共はヒト単球腫瘍細胞THP-1からホルボールエステルで分化させたマクロファージを培養し、PCAがABCA-1やABCG-1 mRNAを増加させること、Y2R mRNAを増加させることを確認した。一方、Y2Rを刺激するpeptide YY(3-36)によるABCA1やABCG1 mRNAへの効果をreal time PCRで再度検討を繰り返した結果、有意な変化を認めず、既報のNPYとNPY+BIIE0246で比較したマイクロアレイの結果とも一致した。以上よりPCAの抗動脈硬化作用は主にABCA1やABCG1輸送体発現増加によるものと考えられたが、一部には既報のY2Rを介するNPY作用の増強によるレプチンシグナル・パスウェイ抑制の関与が示唆された。他方ポリフェノールのフェノール酸であるクロロゲン酸を同様に検討したが、ABCA1, ABCG1 mRNAへの有意な影響を認めなかった。 次に薬剤の1つであるperoxisome proliferator activated receptors (PPAR)γアゴニストの1つであるチアゾリジン誘導体の抗動脈硬化作用機序について同様にABCA1, ABCG1 mRNAへの影響をreal time PCRで検討した。その結果いずれも有意に変化しなかった。PPARγアゴニストがABCA1の発現を増加させるとする報告と有意に変化させないとする報告があり、後者の結果を支持するものであった。
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