研究課題
福岡県内の糖尿病を専門とする医療機関16施設に平成20年から22年にかけて通院中の糖尿病患者5131人について、食事、運動、メンタルヘルス、検査値、治療を含む臨床情報ならびに血液、尿、DNAを収集し、登録を終了、コホート集団とした。登録患者の治療状況や合併症(脳心血管障害、腎機能、網膜症、足病変、重症低血糖、骨折、癌、死亡など)について医師が直接カルテや画像診断などを閲覧し、高い精度で追跡を継続している。平成29年度はこのコホート集団のイベント発症や各データ収集を含めた追跡の精度を高めること、また追跡の延長作業を行った。本年度の論文発表は、①2型糖尿病患者において血清アディポネクチンの増加が骨折イベント発症と関係すること(Diabetologia. 2017 Oct;60(10):1922-1930)、②2型糖尿病患者においてPON-1遺伝子多型とスタチン治療の間にインスリン分泌に対する交互作用が存在すること(BMC Med Genet. 2017 Dec 12;18(1):146)、③日本人2型糖尿病患者における足潰瘍、切断の頻度(Diabetes Res Clin Pract. 2018 Mar;137:183-189)を報告した。また、理化学研究所との共同研究により糖尿病と関連する遺伝子多型(SNP)を解析しており、今後のテーラーメイド医療への応用に向けて検討を進める予定である。
2: おおむね順調に進展している
コホート研究の追跡調査は5年を過ぎているが、追跡率は90%以上を維持している。また、遺伝子解析も予定通り行われている。断面調査データを用いた研究成果は、論文発表、学会発表を順次行っており、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
前年度と同様に断面調査解析及び追跡調査を行う。追跡不明者を可能な限り減らすよう努力する。データベースの構築を進め、データの整合性や欠損値の確認を行う。本コホート研究(前向きゲノムコホート研究)に収集されたデータを用いて、わが国の糖尿病患者に対するより効果的な治療(テーラーメード治療)を目指して解析を行う。各種栄養素摂取状況と各種イベント(血管合併症、悪性腫瘍、骨折など)との関連について、SAS統計解析ソフトを用いて解析する。さらに、遺伝子との相互作用についてSNPとの関連を検討し、栄養-遺伝子相互作用を明らかにする。
平成29年度の追跡作業は順調に進行しているが、電子化作業が遅れたため、予算の執行が遅れている。今後追跡調査の電子化作業を進め、データセットを整備し、解析を行う予定である。
すべて 2018 2017 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
Diabetes Res Clin Pract
巻: 137 ページ: 183-189
10.1016/j.diabres.2018.01.020
Diabetologia
巻: 10 ページ: 1922-1930
10.1007/s00125-017-4369-1
BMC Med Genet
巻: 12 ページ: 146
10.1186/s12881-017-0509-1
http://www.diabetes.med.kyushu-u.ac.jp/fdr/