研究課題/領域番号 |
16K00862
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研究機関 | 長崎県立大学 |
研究代表者 |
四童子 好廣 長崎県立大学, 看護栄養学部, 教授 (00111518)
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研究分担者 |
岡本 恭子 長崎県立大学, 看護栄養学部, 助教 (40714853)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | mevalonate / geranylgeraniol / geranylgeranoic acid / isotopomer / human hepatoma cell / cancer chemoprevention / lc-ms/ms |
研究実績の概要 |
ゲラニルゲラノイン酸(GGA)は、ターメリックなどの植物に含まれる非環式ジテルペノイドとして知られているが、哺乳動物における生合成については未確立である。申請者らは、メバロン酸代謝経路の中間体の1つで、タンパクのイソプレニル化のドナーとなるゲラニルゲラニルピロリン酸(GGPP)の脱リン酸化体であるゲラニルゲラニオール(GGOH)が哺乳動物においても生成されることに着目し、GGOHからGGAへの酸化反応が起こるものと想定して、研究を行ってきた。その結果、安定同位体で標識したメバロノラクトン(R-[2-13C]-MVL)をヒト肝癌由来細胞株HuH-7の培養系に添加すると、細胞内のGGAに13Cの取り込み(metabolic labeling)が観察され、同じGGAでも13Cの取り込み個数の異なるIsotopologuesが、GGAの持つイソプレン単位の数に応じて0個から4個まで観察されたので、取り込み個数の同じものIsotopomerの割合(Isotopomer Spectrum)を、標識時間を変えて解析することにより、メバロン酸からGGAへの生合成のKineticsを算出した(Isotopomer Spectral Analysis:ISA)。 ISAを行った結果、2つのパラメーターが実験的に測定され、内因性メバロン酸と13C標識メバロノラクトンのモル比に相当するD値が0.56となった。これは添加した13Cメバロノラクトンの濃度と細胞内のメバロン酸の濃度がほぼ等しいことを示している。一方、もう一つのパラメーターであるg(t)は同位体標識化合物を添加してからの時間依存的に変動するパラメーターで、時間とともに増加するが、12時間を過ぎるとほぼ0.9 の値に近づき、一定となった。このことから、12時間で細胞内のGGAの90%以上が新たに生合成されることが判明した。これらの実験結果は、2018年度の日本生化学会ならびに日本分子生物学会などに発表するとともに、まとめて学術論文としてJournal of Lipid Research誌に掲載された(J Lipid Res. 2019 Mar;60(3):579-593)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ計画通りに進み、所期の実験結果を得ているが、本年度が申請者の現職場での最後の年度となったので、当初の計画を1年延長して、最後の詰めの研究を行い、本研究計画の完成を記することにした。
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今後の研究の推進方策 |
GGOHからGGAへの酸化反応は、通常、生化学的には2段階の反応で達成される。すなわち、GGOHが酸化されてゲラニルゲラニルアルデヒド(GGal)となり、GGalがさらに酸化されてGGAが生合成されるという2つの反応である。後者のGGalからGGAへの反応はNAD依存性のいわゆるアルデヒド脱水素酵素によって触媒される非特異的な反応であるが、GGOHからGGalの酸化反応はNAD非依存性で、分子状酸素を必要とするオキシダーゼによるものであることを確認している。そこで、本年度は、このオキダーゼと考えられる酵素がモノアミンオキダーゼB (MAOB)と同じ酵素であるかどうかを確認し、肝MAOBのGGA合成における役割を同定する実験を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画を1年間延長したために、前年度の予算を節約してできるだけ購入済みの試薬・器具等のみを用いて実験を行い、次年度の実験研究費として繰り越すように工夫した。また最終年度にあたる今年度は、MAOB欠損細胞株の作製や成果報告書の作成のための予算も確保した。
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