研究課題/領域番号 |
16K00870
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
前場 良太 帝京大学, 医学部, 講師 (40192330)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | プラスマローゲン / アルキルリン脂質 / 高密度リポタンパク質(HDL) / コレステロール引き抜き能 / 老化促進マウス / 動脈硬化 / HDL代謝 |
研究実績の概要 |
末期腎不全患者由来のHDLにdetergent removal methodにより様々なリン脂質を付加し、それらのコレステロール引き抜き能に及ぼす影響を検討したところ、特にドコサヘキサエン酸(DHA)を構成脂肪酸に持つプラスマローゲンに有意なコレステロール引き抜き能の増加効果(リン脂質未付加のHDLの約2倍)を認めた。さらに、健常者由来のHDLに構成脂肪酸が異なる各種プラスマローゲンを付加し、コレステロール引き抜き能を測定・比較したところ、同様にDHAをもつプラスマローゲンのみに有意な引き抜き能の増加効果を認めた。以上の結果、特にDHA含有プラスマローゲンの増加効果を有する海産物由来アルキルリン脂質の摂取は、HDLのコレステロール引き抜き能の向上を通して抗動脈硬化作用を発揮する可能性が示唆された。 次に、プラスマローゲン欠乏を伴う動脈硬化モデル動物として、老化促進マウスSAMP8(20週齢)の生化学的特徴を検討した。プラスマローゲン欠乏は血清およびHDLに加え、肝でも顕著であった。また、血清総コレステロール濃度の有意な低下、血糖および肝機能障害マーカーALTの有意な上昇を観察した。各種組織における遺伝子発現(mRNA)を検討したところ、SAMP8肝でのプラスマローゲン合成酵素(AGPS)、HDLの主要アポリポ蛋白質(ApoA1)、脂質代謝関連核内転写因子(PPARα)、HDL中の抗酸化酵素(PON1)、および抗酸化ストレス酵素Hmox1の有意な発現低下を認めた。さらに、コレステロール逆転送系トランスポーター(ABCA1)および胆汁酸合成酵素(Cyp7a1)の遺伝子発現の低下傾向が観られた。以上から、SAMP8(20週齢)はプラスマローゲン欠乏と共にHDL代謝(合成およびコレステロール逆転送系)の低下を伴う動脈硬化モデル動物として有用であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度からの課題であり技術的に難易度の高かったHDLへのプラスマローゲンを含むリン脂質の付加法を確立し、付加によるコレステロール引き抜き能への影響を評価することが可能となった。 動脈硬化モデル動物として検討している老化促進マウスSAMP8は、プラスマローゲン欠乏に加えHDL代謝(産生系および逆転送系)の低下も観られることが明らかとなった。これはSAMP8がプラスマローゲンとHDL代謝との関係を検討する上できわめて有用なモデル動物であることを意味しており、この発見は本研究を遂行していく上で大きな進展と考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
アルキルリン脂質の摂取によるプラスマローゲンの補充によりHDL代謝がどのように変化するかをSAMP8を用いて検討していく予定である。 また、アルキルリン脂質の替わりにドコサヘキサエン酸(DHA)の摂取効果を対象実験として計画している。 さらに、時間的余裕があれば、高コレステロール食の負荷によるSAMP8の動脈硬化発症の評価系を確立し、アルキルリン脂質の動脈硬化抑制効果を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
差額が生じたため。
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