研究課題/領域番号 |
16K00871
|
研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
内田 俊也 帝京大学, 医学部, 教授 (50151882)
|
研究分担者 |
柴田 茂 帝京大学, 医学部, 准教授 (60508068)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 機能性食品 / 低カリウム野菜 / 慢性腎臓病 / 血液透析 / 高カリウム血症 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、機能性野菜の1つとして注目される低カリウム野菜の臨床現場における有用性について検討するものである。とくに慢性腎臓病(CKD)においては併発症としての高カリウム血症は生命を脅かすものであり、毎日の食事から摂取するカリウムを厳しく制限することが必要となる。このことは、生活の質を著しく損ねることであり、カリウムの含有量を5分の一に減らすことに成功した低カリウムレタスはCKD患者や慢性維持透析患者のカリウム制限指導の一貫として有用である可能性が期待される。 まず、維持透析患者および透析医療関係者の高カリウム血症に対する意識調査をアンケート形式で施行した。その結果、患者側からは1,099名の回答が得られ、59%の患者がカリウム管理にストレスを感じているという実態が判明した。一方、医療側も高カリウム血症に対して57%がストレスになっていた。そこで本研究課題のもと、まずは血液透析患者における満足度と有用性について検討することにした。試験デザインは非盲検の前後比較試験として、低カリウムレタスを3か月毎日摂食し、その後通常食にクロスオーバーして、患者からは低カリウムレタスを通常食と比較しての食感、食べやすさ、便通などを比較し、同時に血液検査の項目として血清K値および血液ガスを比較するプロトコールにした。同時に服用が難しいとされるカリウム吸着薬の必要性の変化についても検討した。 本学および協力施設の倫理委員会の審査を受け、15施設、50例の症例登録を目標に研究を開始した。計画通りに進行し、まもなく全症例の研究が終了する。現在、研究終了症例から患者アンケートの回収、検査値、薬剤服用歴の変化などを回収している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本学および協力施設の倫理委員会の審査を受ける時点でやや時間を必要としたが、研究開始後は本学の関連病院および関連クリニック15施設から50例の症例登録は比較的スムースに行うことができた。また研究プロトコールも低カリウムレタスの強制的な摂食期間は3か月であり、研究費の支援もあって患者負担はまったくなかったことが、症例登録のエントリーを容易にした側面もある。一方で、脱落例も若干例あったが、これは低カリウムレタスを強制的に食することへの抵抗、家庭の保存用冷蔵庫の容量問題などであり、低カリウム野菜に直接に関連したものではなかった。いずれにしても大きな事故は発生しなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
低カリウムレタスの摂取期間である3か月はすでに終了し、通常食にもどす3か月期間もまもなく終了する。現在患者からのアンケート調査票を回収し、協力医療施設から検査値および薬剤服用変化についてのデータを回収中である。全50例が集まり次第、統計的手法で解析する予定であり、学会報告および論文報告などにより研究成果を発表して、この新規の機能性野菜についてはば広く公表する予定である。 今回はすでに血液透析を行っている患者での研究であったが、低カリウム野菜の有用性は保存期にあるCKD患者でも検討する必要がある。推算糸球体濾過量が60 ml/分をきるCKDステージ3,4,5の患者は透析患者32万人に比較して1,000万人以上ときわめて多く、急激な高K血症で緊急入院したり、心室性の不整脈で頓死する患者は後を絶たない。次段階として保存期CKD患者において低カリウム野菜の有用性について検討する予定であり、引き続きのご支援をお願いいたします。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題に対して申請者が所属する研究費を使用してすでに研究開始をしていたため、年度の使用額との当初の予定額との間に差異が発生したと思われる。
|
次年度使用額の使用計画 |
本研究は、もともと科研費の支給額では不足することが予想され、超える分については研究費を支出する予定であった。本研究はこれからデータ回収、データ解析が必要となるため、人件費、解析費用および論文発表にかかると予想されるため、それに充当する予定である。助成金が余剰になる可能性はない。
|