研究実績の概要 |
慢性腎臓病(CKD)患者は1300万人が罹患しており、コモンディジーズの一つである。CKDは、心血管疾患を発病することから心腎相関と呼ばれている。CKD進行防止のためには危険因子に対する介入を行うと同時に、降圧効果・臓器保護効果・尿蛋白減少効果などを期待してレニン-アンジオテンシン系抑制薬を常用する。しかし合併症としての高カリウム血症は生野菜摂取を躊躇させ、家族の団欒を阻害してきた。 本研究では、水耕栽培によってカリウムの含有量を5分の1に減らすことに成功した低カリウム野菜に着目して、維持血液透析患者の日常生活に取り入れることによる生活の質の向上と有用性について検討した。 まず、低カリウム野菜の潜在的な需要を明らかにするために、維持血液透析患者と血液透析医療にあずかるスタッフを対象に「高カリウム血症」に対する意識調査を行った。その結果、患者も医療者も高カリウム血症に対して非常に神経をつかっており、その管理が大きなストレスになっている現状が浮かび上がり、低カリウム野菜のニーズが極めて高いことが判明した。 次に、維持血液透析患者を対象に低カリウム野菜の満足度と有用性について臨床試験を行った(52名)。その結果、3か月間の低カリウムレタスを食用した感想として「野菜を食べられるのがうれしかった」、また早期の導入を期待する声など好意的な反応が多かった。さらに低カリウム野菜が患者のカリウム管理に役に立つとの声が96%で得られた。客観的指標として血清K値が中止後2週で有意に上昇したこと(N = 52; 5.22 ± 0.76→ 5.36 ± 0.74 mEq/L, P = 0.04)は、低カリウム野菜が血清カリウムの低下に寄与していたことを示唆する結果と考えられた。 低カリウム野菜は「機能性野菜」の1種であり、CKD患者や慢性維持透析患者のカリウム制限指導を補完するものであることが期待される。
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