研究実績の概要 |
ミネラルの一つであるリンのセンシング機構の解明は、リンの生体作用を理解する上で必須であり、健康の維持、疾病の診断や治療、予防を考える上で重要である。本研究では、新たなリン・ビタミンDセンシング機構の解明を行い、疾患特異的タンパクおよび時間栄養を考慮したCKD-MBD発症・進展の診断・予防法の開発と確立、国民の健康寿命の延長への寄与をめざすことを目的としている。alpha-klothoは、生後早期に老化様症状を示すトランスジェニックマウスの原因遺伝子として発見され、リン・ビタミンD代謝調節因子のFGF23作用を発揮するために必須である。これまでに、alpha-klotho発現は食餌性リン、活性型ビタミンD、加齢、慢性腎不全などにより変動することが報告されているが、加齢によるalpha-klotho発現変動がビタミンD代謝へ与える影響は未だ明らかではない。そこで、1,2,13ヶ月齢マウスとリン濃度の異なる食餌[高リン食(Pi 1.2%)または低リン食(Pi 0.02%)]を用いて、加齢による腎alpha-klotho発現変動とビタミンD代謝の関連性について研究を行った。結果、リンの血中濃度および尿中排泄率は、各月齢の高リン食群で高値を示し、カルシウムの血中濃度および尿中排泄率は、各月齢の低リン食群で高値を示した。次に、血中活性型ビタミンD [1,25(OH)2D]濃度を測定した結果、1,2ヶ月齢で高リン食群が低値を示したが、13ヶ月齢では有意差を認めなかった。腎臓におけるalpha-klothoのmRNA及びタンパク質発現を解析した結果、1,2ヶ月齢のH高リン食群で低い傾向を示した。興味深いことに、両群ともに1ヶ月から2ヶ月齢にかけてalpha-klothoの発現は増加し、13ヶ月齢では減少した。以上の研究結果から、加齢によるalpha-klotho発現変動は食餌性リンの反応性を変化させ、ビタミンD代謝に影響を及ぼす可能性が示唆され、ライフステージに応じたリンの管理の必要性が示唆された。
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