研究課題
近年、問題視されている過剰なリン摂取は、腎障害や心血管疾患のリスクファクターになることが知られている。本研究では、成長期における食餌性リン摂取が、リン代謝調節因子FGF23作用に重要な腎α-klotho発現やリン・カルシウム・ビタミンD代謝、異所性石灰化に及ぼす影響を検討した。C57BL/6Jマウスを用い、食餌性リン負荷試験を行った。短期試験では、離乳直後(3週齢)と青年期(7週齢)のマウスを無作為に7つのグループに分け、リン濃度0.02から1.8%までの異なるリン含有食をそれぞれ7日間与えた。また長期試験では、離乳直後のマウスにリン濃度0.6%または1.8%の異なるリン含有食をそれぞれ21日間与え、経時的に観察した。結果、短期試験では、離乳直後の高リン食群において、血中リン濃度やFGF23濃度の上昇、腎α-klotho発現の低下が観察された。また、腎臓におけるFGF23/α-klothoシグナルの標的遺伝子であるEgr-1発現は、離乳直後の高リン食群において上昇しており、腎臓におけるリン再吸収を担うナトリウム依存性リン酸トランスポーター(Npt2a、Npt2c)発現は低下していた。さらに離乳直後マウスへの高リン食投与は、腎臓の顕著な石灰化を誘発した。しかしながら、青年期では、リン濃度1.8%の高リン食を与えられても腎石灰化は観察されなかった。離乳直後のマウスにおける長期試験の結果より、長期的な高リン食摂取は、血中リン濃度やFGF23濃度の上昇、腎α-klotho発現の低下を引き起こし、FGF23/α-klothoシグナルを抑制した。これらの結果は、成長期の中でも幼若期における高リン食摂取が、青年期以降の期間よりもより有害である可能性を示唆している。さらに、高リン食の長期摂取は、腎臓のα-klotho発現抑制によるFGF23耐性状態を引き起こし得ることも示唆された。
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