研究課題/領域番号 |
16K00885
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研究機関 | 相愛大学 |
研究代表者 |
庄條 愛子 相愛大学, 人間発達学部, 教授 (40517265)
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研究分担者 |
北村 進一 大阪府立大学, 研究推進機構, 特認教授 (60117869)
水野 淨子 相愛大学, 人間発達学部, 教授 (90190652)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 食用担子菌類 / 複合脂質 |
研究実績の概要 |
担子菌(Basidiomycota)の子実体であるキノコは、古くから食用として馴染み深く市場に多数出回っており、日常的に調理に利用されている以外にも、健康食品としても広く販売・消費されている。 本研究グループではキノコ類に含まれるセラミド含有スフィンゴ糖脂質(GSL)を中心にその存在量、in vitroおよびin vivoでの免疫調節における作用機序の検討を行い、GSL 以外にも様々な複合脂質が含まれていることが明らかにしている。本研究では、基盤(C)課題番号25350159の成果をもとに、キノコの機能性を複合脂質の脂質生化学的・脂質免疫学的側面から第三次機能として解明することを目的とし、研究を計画・実施した。 平成30年度は基盤研究(C)課題番号25350159の成果をもとに、各種食用担子菌(食用キノコ)の複合脂質成分画分の大量調整と各種測定機器での分析手法の確立を中心に研究を行った。具体的には、①各種食用担子菌に含まれる脂質成分の抽出、②高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による複合脂質の脂肪酸組成の分析手法の確立、③ガスクロマトグラフィー・マススペクトロメトリー分析(GC/MS)による脂肪酸組成の分析方法の確立および④HPLC(②)、GC/MS(③)を用いて分析した各種食用担子菌の複合脂質の脂肪酸組成の比較・検討および⑤シリカゲルカラムを用いた複合脂質画分の大量調整の検討を行った。 過年度の結果と合わせて①HPLCを用いた分析ではGC/MSを用いた場合と類似性および高い再現性が示され、②HPLCでの分析系は各種食用担子菌の複合脂質の分析に有効であることが明らかとなった。平成30年度も③シリカゲルカラムを用いた複合脂質画分の大量調整の確立には至らず、条件設定のみにとどまっている。動物投与試験のために必要なサンプル量を調整することができなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究グループではキノコ類に含まれるセラミド含有スフィンゴ糖脂質(GSL)を中心にその存在量を検討した結果、食用担子菌類にはGSL 以外にも様々な複合脂質が含まれていることを明らかにしている。本研究では、基盤(C)課題番号25350159の成果をもとにキノコの機能性を複合脂質の脂質生化学的・脂質免疫学的側面から第三次機能として解明することを目的し、①分析手法の確立、②複合脂質の構造解析および③動物を用いた抗アレルギー作用の評価を中心に研究を計画・実施した。 平成30年度は研究実施計画に記載した当該年度の計画に沿って、ほぼ順調に研究を実施した。具体的には基盤研究(C)課題番号25350159の成果をもとに、①各種食用担子菌(食用キノコ)の複合脂質成分画分の各種測定機器での分析手法の確立、②複合脂質画分の大量調整の確立を中心に研究を行った。 現在までに①各種食用担子菌に含まれる脂質成分の抽出と複合脂質の分画の大量精製方の確立、②HPLCによる複合脂質の脂肪酸組成の分析手法の確立、③GC/MSによる脂肪酸組成の分析方法の確立および④HPLC(②)およびGC/MS(③)を用いて分析した各種食用担子菌の複合脂質の脂肪酸組成の比較・検討、⑤シリカゲルカラムを用いた複合脂質画分の大量調整方法の検討を実施した。 これらの結果から、①HPLCを用いた脂肪酸組成の分析ではGC/MSを用いた場合と同様の高い再現性が示され、②本実験で確立分析系は、各種食用担子菌の複合脂質の分析に有効であること、③市販食用担子菌類の複合脂質の分析から、HPLC分析は複合脂質の評価に非常に有効であることが明らかとなった。しかしながら、④複合脂質画分の大量調整方法の確立には至らず、動物投与試験のために必要なサンプル量を調整することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
食用担子菌類の機能性を複合脂質の脂質生化学的・脂質免疫学的側面から第三次機能として解明することを目的する本研究の遂行のため、基盤研究(C)課題番号25350159および平成28~30年度の成果をもとに、今後は①分析手法および大量調整法の確立を中心に、③動物を用いた抗アレルギー作用の評価も並行して実施する予定である。 平成28~30年度の成果から、おもに市場で多く市販されている食用担子菌類の複合脂質の脂肪酸組成分析にHPLCを用いた分析が非常に有効であることが明らかとなったことから、他の食用担子菌類でも同様の評価を実施し、分析時間が長時間で使用する試薬が高価なGC/MSでの分析の結果と比較することで、安価で簡便な複合脂質分析の分析法および調整方法を確立したいと考えている。 また、各種キノコ子実体から調製した複合脂質画分を用いて、キノコ脂質成分のBalb/cマウスの小腸パイエル板細胞でのin vitro腸管免疫賦活作用を評価する。具体的には各種食用担子菌類の複合脂質をマウスの小腸パイエル板細胞の培養液に添加し、各種サイトカイン濃度の測定および遺伝子発現を解析することで、細胞レベルでの腸管免疫賦活作用の評価を実施予定である。さらに、in vitroでの腸管免疫賦活作用の結果をもとに、各種キノコ子実体の複合脂質画分を正常マウス(Balb/c マウス)およびアレルギー性皮膚炎モデルマウスへの投与試験を実施する。各種キノコの複合脂質成分をマウス標準餌に混合して、耳介にトリニトロクロロベンゼンを塗布することでアレルギー性皮膚炎を人為的に誘発させたアレルギー性皮膚炎モデルマウスを飼育し、耳介の厚み、炎症の指標である腫脹・発赤などの変化を測定・観察し、食用担子菌類の腸管免疫を介した抗アレルギー作用の作用機序を評価する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度に予定していた各種キノコ子実体から調製した複合脂質画分を用いた、キノコ脂質成分の培養細胞での腸管免疫賦活作用評価を実施しなかったため、①マウスの購入費用、②IFN-γ、IL-4、IL-6、IL-10 およびIgA のタンパクレベルでの検討(ELISA 法)のためのサイトカイン測定キット、③樹状細胞およびCD4+T 細胞からのサイトカイン刺激を介した小腸パイエル板B 細胞のIgA+B 細胞、IgA 分泌形質細胞への変化の遺伝子レベルでの検討のための試薬、消耗品などが物品費として次年度使用額として生じた。 各種キノコ子実体から調製した複合脂質画分を用いた、キノコ脂質成分の培養細胞での腸管免疫賦活作用評価は次年度に実施する予定であることから、①マウスの購入費用、②IFN-γ、IL-4、IL-6、IL-10 およびIgA のタンパクレベルでの検討(ELISA 法)のためのサイトカイン測定キット、③樹状細胞およびCD4+T 細胞からのサイトカイン刺激を介した小腸パイエル板B 細胞のIgA+B 細胞、IgA 分泌形質細胞への変化の遺伝子レベルでの検討のための試薬、消耗品などが物品費として次年度に使用する予定である。
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