研究課題
本研究では日本人において慢性心不全の治療としてω-3多価不飽和脂肪酸の補充療法が左心機能を改善し自覚症状を軽減し心不全の予後を改善する。という仮説に基づいて研究計画を立てた。収縮機能が低下している心不全患者について、通常の非薬物治療や薬物治療のみを行い、無作為に振り分けられた一群ではエイコサペンタエン酸 (EPA) 製剤を開始、もう一群では従来の治療のみを行い、振り分け開始時と慢性期3-6ヶ月後に自覚症状・QOLの評価を行い、心エコー図検査 (左室駆出率: LVEF、左房容量係数: LAVI、E/e’ : イーオーバーイープライム、左室流入速波形の成分のE波(拡張早期波)と組織ドップラーを用いた弁輪速度e’の比。高値は心不全が疑われる。) で心機能の評価を、また心肺運動負荷試験 (CPX: Cardiopulmonary test)、運動負荷エコーで運動耐容能を評価する。介入試験の進行については現時点で解析を行う症例数に達していないが、重症弁膜症、有意な冠動脈狭窄が残存した狭心症患者を除外した安定狭心症患者367症例において、多価不飽和脂肪酸 (EPA、ドコサヘキサエン酸 (DHA)、EPA/AA (エイコサペンタエン酸/アラキドン酸比) と心エコー図検査の相関を調べたところ、EPA、DHA、EPA/AA比などの多価不飽和脂肪酸と心エコー心不全評価指標の間には有意な相関を認めなかった。動脈硬化の指標として注目されているEPA/AA比と心エコー指標の相関係数はそれぞれ対LVEF 0.02、対LAVI -0.03、対E/e’ -0.03であった。またEPA製剤内服群 (n=322) と非内服群 (n=45) との間で有意な心エコー指標の差を認めなかった。
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