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2016 年度 実施状況報告書

新規機能性脂質によるメタボリックシンドローム予防に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 16K00890
研究機関西九州大学

研究代表者

柳田 晃良  西九州大学, 健康栄養学部, 教授(移行) (00093980)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード機能性食品 / 機能性脂質 / メタボリックシンドローム / 脳機能 / 脂質代謝
研究実績の概要

本研究は世界的に問題となっているメタボリックシンドロームの予防・改善に活用できる機能性食品,機能性脂質の発見や創製を目的としている。その研究の一環として、脂肪酸分子種の異なるホスファチジルコリンの脳機能改善機能について検討した。
スコポラミンによって誘発された認知症マウスに、イカ由来ホスファチジルコリン(SQ-PC)及びナマコ由来(SC-PC)を給餌して、モーリスの水迷路試験を用いた認知症改善評価を行い、次に脳の各部位におけるアセチルコリンエステラーゼ(AchE)、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、モノアミンオキシダーゼ(MAO)の活性及びマロンジアルデヒド(MDA)含量を測定して生理学的変化を評価した。その結果、卵黄レシチン(EL)群と比較して、イカ-PC群とナマコ-PC群では学習記憶障害の改善作用が顕著であり、リン脂質分子種の違いが認知症改善効果に影響することが示唆された。また、イカ-PCとナマコ-PCの給餌によりアセチルコリンエステラーゼ活性の減少とスーパーオキシドジスムターゼ活性の増加が認められ、同時にマロンジアルデヒド量および大脳白質のモノアミンオキシダーゼ活性の低下が認められた。したがって、イカおよびナマコ由来ホスファチジルコリンの認知症改善作用には、アセチルコリンの分解抑制に伴う情報伝達の維持、セロトニンやノルアドレナリンなど生体アミン濃度の維持や、生体酸化の抑制などが相乗的に関与していることを示唆した。使用したリン脂質によりその作用の程度はいくらか異なることから、ホスファチジルコリンの脂肪酸分子種の違いが脳機能改善効果に影響することが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

研究期間中、体調不良のため病欠、休職したため当初の目標に到達することはできなかった。しかし、一部興味ある結果は得られた。イカやナマコ由来のリン脂質ホスファチジルコリンを調製し、スコポラミンによって誘発された認知症マウス脳機能への影響を検討した.対象群には卵由来ホスファチジルコリン(EL)を用いた。その結果、モーリスの水迷路試験を用いた認知症改善評価では、卵黄レシチン(EL)群と比較して、イカ由来ホスファチジルコリン(SQ-PC)及びナマコ由来(SC-PC)では学習記憶障害の改善が認められた。また、イカ-PCとナマコ-PCの給餌によりAchE活性の減少とSOD活性の増加が認められ、MDA量と大脳白質のMAO活性の減少が認められた。以上の研究結果は、構成脂肪酸分子種の異なるホスファチジルコリンは認知症マウス脳機能に異なる作用をもつことを示唆している。以上の様に一部興味ある新知見が得られているが、機能性脂質、構造脂質の創製に関してやや遅れているものと評価している。

今後の研究の推進方策

機能性脂質およびその関連化合物の生理機能に及ぼす影響を明らかにする一環として、認知症モデルマウスの脳機能に及ぼす脂質関連化合物及びそれらの代謝変動への影響を検討する。初年度で、リン脂質が認知症の改善作用をもたらしている可能性を示唆した。高齢化社会で脳機能の改善とくに認知症の改善作用を持つ機能性食品の開発は緊急の課題であるので引き続き研究を行う予定である。今後の研究としては、病態モデル およびin vitro 実験系を用いた新規機能性脂質の生活習慣病予防・改善機能の評価 を行う。具体的計画は以下に示す。
1 )高脂血症については、ヒト肝臓モデルHepG2細胞および初代培養肝細胞における、放射性同 位元素ラベル脂質の合成と培地中への分泌およびリポ蛋白質合成調節因子 MTP への影響を 指標として評価を行う。 2) 動脈硬化については、マクロファージや動脈由来平滑筋細胞における、過剰蓄積コレステロ ールの細胞外への搬出の責任分子である ABCA1 への影響を、レポータージーンアッセイ及 び放射性同位元素ラベル脂質を用いて評価する。 3) 糖尿病については、マウス由来 3T3L1 細胞やヒト由来初代培養白色脂肪細胞における、イン スリン抵抗性発症関連因子アディポネクチン及びインクレチン発現への影響を、レポータ ージーンアッセイ及びリアルタイム RT-PCR 法を用いて評価する。 4 )高血圧については、レニン・アンジオテンシン系の律速であるアンジオテンシン変換酵素活 性への影響を指標として評価する予定である。

次年度使用額が生じた理由

研究期間中、一時体調を壊し休職した【平成28年8月から平成29年3月まで】。そのため28年度分の予算の一部を執行することができなかった。

次年度使用額の使用計画

28年度予算で執行しなかった予算を29年度の予算に組み込み執行する計画である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Serum pharmacokinetics of choline, trimethylamine and trimethylamine-N-oxide after oral gavage of phosphatidylcholines with different fatty acid compositions in mice2016

    • 著者名/発表者名
      Gao X, Jiang C1, Xu J, Yanagita T, Xue C, Wang Y
    • 雑誌名

      Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry

      巻: 80 (11) ページ: 2217-2223

    • DOI

      10.1080/09168451.2016.1206813

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 脂質構造異性体とメタボリックシンドローム2017

    • 著者名/発表者名
      永尾晃治 柳田晃良
    • 学会等名
      日本栄養食糧学会
    • 発表場所
      沖縄国際会議場, 沖縄県宜野湾市
    • 年月日
      2017-05-19
    • 招待講演

URL: 

公開日: 2018-01-16  

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