研究実績の概要 |
植物が生産するフィトケミカルは多彩な生物活性を有し、食品機能の観点からも大きな注目を集めている。本年度は、フィトケミカルのうち特にカルコノイド類を中心に、ヒト培養細胞に対する細胞毒性や白血球活性酸素(スーパーオキシド)産生能に影響を及ぼす化合物のスクリーニング及びその作用機作の解析を行った。実験系としては、ヒト単芽球様株細胞U937のin vitro分化誘導系(誘導剤としてレチノイン酸を使用)を用いた。 その結果、細胞毒性については、2-hydoroxychalcone、イソリキリチゲニンやブテインに強い細胞毒性があることを見出し、水酸基の数や位置がカルコン誘導体の細胞毒性に大きな影響を及ぼすことを発見した。本研究結果は、昨年の9月にFundamental Toxicological Sciences誌に掲載された(Kikuchi H. et al. Fundam. Toxicol. Sci., 5: 149-152, 2018)。また、活性酸素産生能については、カルコン誘導体のうち、イソリキリチゲニン及びブテインに増強効果を認めた。これらの白血球活性酸素産生増強作用の分子機構を解明するため、RT-PCR解析を行った。その結果、白血球活性酸素産生系を構成するタンパク質因子のうち、gp91-phoxの転写量が増加していることが判明した。イムノブロット解析の結果、当該タンパク質量も増えていることが明らかとなった。また、ChIPアッセイの結果、カルコンやブテインで処理した細胞では、gp91-phox遺伝子のプロモーター領域でヒストンH3の9番目及び14番目のリシン残基のアセチル化が亢進していることが示された。現在論文投稿中である。
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