研究実績の概要 |
ビタミンD(VD)は腸管吸収後に肝臓及び腎臓で活性化されて栄養機能を発揮する。D2及びD3の他にD4-D7が存在する。D2はきのこ、D3は魚からのみ摂取可能ではあるが、摂取源が限られている。また、D3は日光によってコレステロール合成系から前駆体を元に生合成可能であるが、皮膚がんリスクからの日光忌避、コレステロール合成阻害薬投与により、VD不足を起因とするロコモーティブシンドロームが懸念される。そこでD4 -D7についても吸収特性や代謝を調べ、かつ申請者の有する吸収促進技術を用いて吸収向上を図ることで、VD不足の懸念に対処する。 市販品が無いD5-D7の試験では、種類によって吸収性が他に比べて低いものが認められた。また、全ての種類のVDについて、リゾリン脂質による吸収促進効果が認められた。吸収受容体阻害剤を用いて検討した結果、どのVDも同程度の割合での受容体経路の吸収が示唆された。さらに、受容体ノックアウト(KO)細胞をゲノム編集により作製した。平成30年度はこれの作製に時間がかかった。最終的に、KOクローン4株とWTクローン1株を取得できたが、期間内に実験に供することができなかった。 肝臓や腎臓モデルでの代謝と代謝産物の機能についても期間内に検討できなかったが、PASS onlineで代謝産物の機能をシミュレートした(P valueが1.0に近いほど良いスコア。ただし、光学異性体を区別できない。結果の一部を述べる。)。1,25-diOH-VDでは、VD receptor agonist, VD2: 0.844, VD3:0.701, VD6: 0.738となり、VD6が比較的高い数値を示した。抗骨粗鬆効果では、VD5の数値が最も高い0.992を示した。 VD合成方法に関して、現在、論文投稿準備中である。また、吸収試験の結果はデータが揃い次第、論文化を行う。
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