妊娠中の体重増加量を指標に、胎児期栄養環境が胎児に及ぼす影響をさらに解析した。我々の研究対象では、妊娠中の体重増加量が適正を下回る妊婦から出生した児では、体重増加量と連続的に関連して有意に変化する臍帯血DNAメチル化が検出された。適正を上回る妊婦では、そのような関連は認められなかった。適性を下回る妊婦から出生した児で認められた関連は体重が少なければ少ないほど高メチル化変化が認められる変化であった。我々がメチル化変化を同定したこれらの部位は、在胎週数が短ければ短いほど高メチル化変化が認められている、つまり早産児で高メチル化が認められる部位と一致していた。したがって、我々がリクルートした正期産の児の中でも、妊娠期体重増加量が不足していると、本来週数とともに脱メチル化が生じる部位に、早産児のように高メチル化が遺残している、という可能性が示唆された。これらのことより、エピゲノムの観点からも適正な体重増加が胎児発育に重要であることを裏付けた。 さらに、我々は、胎盤のDNAメチル化についても妊娠期体重増加量の影響を検討した。同一人物由来(117名)の胎盤と臍帯血のDNAメチル化パターンを比較すると、胎盤のほうが全体的に低メチル化であり、かつ、各メチル化部位で個人差が大きいのも胎盤であった。これらのことより、子宮内環境の影響が出生時にDNAメチル化値の変化として検出されやすい臓器は、臍帯血よりも胎盤ではないかと考え、現在解析を進めている。
|