研究課題/領域番号 |
16K00901
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研究機関 | 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 |
研究代表者 |
東泉 裕子 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 国立健康・栄養研究所 食品保健機能研究部, 室長 (20360092)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 難消化性食品成分 / 大豆イソフラボン / 骨粗鬆症 / エクオール / 腸内細菌 / 食物繊維 / 骨密度 |
研究実績の概要 |
研究目的:大豆イソフラボンは弱いエストロゲン様活性をもつことから、閉経に起因する骨密度の低下や脂質代謝異常を改善すること、また、腸内細菌により産生される代謝産物であるエクオールは、他のイソフラボンよりも活性が強いことが報告されている。一方で、近年、腸内細菌叢を介した様々な生理作用の可能性が報告されるとともに、プレバイオティクス作用をもつ難消化性食品成分(食物繊維やオリゴ糖等)への関心が高まっている。そこで、本研究では、骨粗鬆症予防におけるプレバイオティクス作用を介した難消化性食品成分と大豆イソフラボンの併用効果を明らかにするとともに、難消化性食品成分の腸内細菌叢を介した骨代謝における新規メカニズムを閉経後骨粗鬆症モデル動物において検討することを目的とした。 研究計画:大豆イソフラボンであるダイゼインとプレバイオティスク作用をもつことが報告されている難消化性食品成分(難消化性グルカン、イソマルトオリゴ糖、グアガム分解物)を閉経後骨粗鬆症モデルマウスに6週間併用摂取させ、腸内環境改善、エクオール産生促進及び骨密度低下抑制作用に着目し、スクリーニング試験を実施した。 研究結果:閉経後モデルマウスにおけるダイゼインと難消化性グルカンの併用摂取は、腸内環境を改善するとともに、エクオール産生を有意に亢進した。また、ダイゼインとグアガム分解物の併用摂取は難消化性グルカン併用摂取と同様の傾向が認められたが、難消化性グルカン併用摂取よりも作用が弱かった。一方、イソマルトオリゴ糖併用摂取による有意な影響はほとんど認めらなかった。ダイゼイン単独摂取及びすべての難消化性食品成分の併用摂取は、エストロゲン欠乏に起因する脛骨骨密度の低下を有意に抑制した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
閉経後モデルマウスにおける難消化性グルカンとダイゼインの併用摂取は、腸内環境を改善し、エクオール産生を有意に亢進した。また、骨密度において僅かであるが難消化性グルカンとダイゼインの併用摂取による効果が認められた。グアガム分解物とダイゼインの併用摂取は腸内環境、エクオール産生及び骨密度において、難消化性グルカン併用摂取と同様の傾向が認められたが、難消化性グルカン併用摂取よりも、作用は弱かった。一方、イソマルトオリゴ糖併用摂取による有意な影響はほとんど認めらなかった。これらの結果より、グアガム分解物及びイソマルトオリゴ糖に比較し、難消化性グルカンは大豆イソフラボンとの併用効果が高い可能性が示された。 しかしながら、ダイゼイン単独摂取でもエストロゲン欠乏に起因する骨密度低下を偽手術マウスと同じレベルまで抑制していたことから、骨密度低下におけるダイゼインと難消化性食品成分との併用摂取による、有意な抑制作用を明らかにすることは出来なかった。 これらのことから、28年度の研究計画は80%達成することができたと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度のスクリーニング試験により、腸内細菌叢を介した骨代謝においてダイゼインと難消化性グルカンの併用効果が高い可能性が示唆されたが、同時に、骨密度に対して、より高い併用効果を見出すためには、ダイゼイン及び難消化性グルカンの摂取量を詳細に検討する必要性が示された。 従来の29年度研究計画では、1年目に同定された難消化性食品成分とダイゼインを閉経後骨粗鬆症モデルマウスに併用摂取させ、エクオール産生能を評価するとともに、腸内細菌叢、骨密度、骨髄や腸の炎症および骨代謝関連遺伝子発現、および体脂肪や血中脂質を評価することを計画していた。しかし、先の理由により、それぞれ単独摂取での効果を検討する必要が示されたことより、研究計画を変更し、ダイゼイン及び難消化性グルカン各々の単独摂取による骨密度、腸内環境及び血中脂質等に対する作用を検討することとした。
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次年度使用額が生じた理由 |
「人件費・謝金」として10万円程度を予算立てていたが、適切な人材が見つからなかったため、それらの予算が執行できなかった。そのため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は平成29年度の研究の進行具合をみて、その際に必要とされる費用に充てていく予定である。
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