研究目的:大豆イソフラボンは弱いエストロゲン様活性をもつことから、閉経に起因する骨密度の低下を抑制すること、また、腸内細菌によりダイゼインから産生されるエクオールは他のイソフラボンよりもエストロゲン様活性が強いことが報告されている。一方で、近年、腸内細菌叢を介した様々な生理作用の可能性が報告されるとともに、プレバイオティクス作用をもつ難消化性食品成分(食物繊維やオリゴ糖等)への関心が高まっている。そこで、本研究では、骨粗鬆症予防におけるプレバイオティクス作用を介した難消化性食品成分と大豆イソフラボンの併用効果を明らかにするとともに、難消化性食品成分の腸内細菌叢を介した骨代謝における新規メカニズムを閉経後骨粗鬆症モデル動物において検討することを目的とした。 研究計画:0.08%ダイゼインと5%難消化性を閉経後骨粗鬆症モデルマウスに6週間摂取させ、難消化性グルカンのプレバイオティクス作用に着目し、腸内細菌叢および骨密度低下に対する併用作用を検討した。さらに、それらの作用機序として、エクオール産生能および炎症との関連に着目し検討した。 研究結果:閉経後骨粗鬆症モデルマウスにおけるダイゼインと難消化性グルカンの併用摂取は、腸内細菌叢の組成を変化させるとともに、エクオール産生を有意に亢進した。また、併用摂取は、エストロゲン欠乏に起因する骨密度および骨強度指標の低下を有意に抑制するとともに、破骨細胞分化因子であるRANKLおよび炎症に関連するIL7R遺伝子発現の増加を抑制した。 研究成果の意義・重要性:ダイゼインと難消化性グルカンの併用摂取は、腸内細菌叢の変化を介してエクオール産生を亢進させ、エストロゲン欠乏に起因する骨密度の低下を防ぐ可能性が示唆された。本研究成果は、閉経後骨粗鬆症の予防における食生活の重要性を示すことにつながる。
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