1. 水田土壌を粒径ごとに分画し、各試料の放射性セシウム捕捉ポテンシャル(RIP)測定を行った。その結果、ホットスポットでは、いずれの粒径においても平成29年よりも10倍以上高い値となった。通常の濃度の地点では、粒径75~100umにおいて平成29年よりも低い値であった。さらに、環境中に存在するフタル酸等の有機物が、放射性セシウムの土壌への吸着を阻害することが想定されるため、土壌試料を500度に加熱して有機物を分解してRIP測定を行った。その結果、有機物が存在しない方が低く、予想とは異なる結果が得られた。 2. 収穫したコメ(モミ全体)のCs-137濃度を、5月から8月までの水田土壌試料の平均Cs-137濃度で割ることで、土からコメへの放射性セシウム移行率を求め た。これまで明らかにしてきた移行率は、平成28年は0.25~0.38%、平成29年は0.08~0.09%であったが、平成30年は0.23~0.98%であった。これは、土壌中のCs-137濃度は減衰によって微減しているにも関わらず、通常の地点で収穫されたコメの濃度が増加したことによる。ただし、その濃度は27Bq/kgと食品中の基準値よりも低い値であった。この要因の一つには、粒径75~100umにおけるRIP値が平成29年よりも低い値であったため、土壌に吸着されずにコメに吸収された可能性があると考えられる。ただし、他に環境中で急激なCs-137濃度上昇をもたらす要因となる現象は観測されなかった。そのため、原発事故によって特定の時間帯に一定の割合で放出したと考えられている水に不溶で比放射能の高い放射性セシウム含有微粒子の存在が、コメのCs-137濃度の増加をもたらしている可能性がある。これらの不溶性微粒子をコメと分離することができれば、「短期で安価、すぐにできる」新しい米の放射性セシウム汚染根治療法となりうる。
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