研究課題/領域番号 |
16K00909
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研究機関 | 鈴鹿大学 |
研究代表者 |
翠川 薫 鈴鹿大学, こども教育学部, 教授 (20393366)
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研究分担者 |
村田 真理子 三重大学, 医学系研究科, 教授 (10171141)
中村 哲 広島文化学園大学, 看護学部, 教授 (40207874)
翠川 裕 鈴鹿医療科学大学, 保健衛生学部, 准教授 (10209819)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 国際研究者交流 / ラオス / アルツハイマー / 生活習慣病 / 生活環境 |
研究実績の概要 |
World Alzheimer Report 2019によるとアルツハイマー病(AD)は低および低中所得国での患者が増大すると警告している。我々は過去20年以上にわたり、開発途上国ラオスで住民の健康と環境について調査をしてきた。マラリアなどの感染症はこの10 年で減少し、肥満と糖尿病が有意に増加している。ラオス国立病院の精神科の医師によると1989年の設立以来74000人の精神科患者のうち、記憶障害の患者は2名のみで、認知症の確定診断は行われていない。ラオスでは認知症患者は通院しない為、実態が不明であるが昨年2月の調査では1名の認知症患者が病院を受診している。また、これまでに2人の認知症患者を調査地域で見つけることができた。 生活習慣病はAD 発症のリスク要因である事から、食や環境因子に注目し予防法を探索するのが本研究の最終目標である。これまで我々が調べたラオス人のAD 危険因子APOEe4 遺伝子を持つ割合は、多数民族ラオ人ではホモ(e4/e4)で約1%と低いが、ヘテロ(e4/ex)は25%、特に少数民族の中でホモが14%、ヘテロ66%の民族を確認した。健診の結果、生活習慣病は認められなかったが、将来、生活習慣病が増加した時、AD 発症リスクは高くなると予想される。また、65歳以上の健康診査を行い、その受診者75名のうち44名について朝食、昼食、夕食および間食の食事調査を行った。残りの30余名についての調査が新型コロナのまん延により現在中断されている。また、ラオス保健省のカウンターパートと研究交流会を行う予定であったが、引き続き新型コロナウィルス流行の為に予定を延期した為、さらに1年の研究延長を行った。ラオスでは、新型コロナ感染者数は今年3月上旬までは1日約1名、累計47名であったが、4月中旬より急増し、5月9日現在で1日69名、累計1302名となり蔓延が危惧される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの長期の調査実績により当該国の研究機関および調査対象の村人との協力体制が確立されていることから、おおむね目標どおりの成果が得られている。 R1年度はH31年の2月に行ったパイロン村の65歳以上の健診受診者の高齢者を対象に9月とR2年2月の2回に分けて、食事調査を行った。65歳の高齢者は75名いるうちの44名について朝食、昼食、夕食および間食について写真と食材の情報を得た。高齢者の食生活は3食摂取し、主食のもち米に魚、肉、野菜がバランスよく摂取できていた。残りの30余名についての調査が新型コロナウィルスのまん延により現在中断されているため、海外渡航が可能になりしだい再開し、詳細な解析を行い高齢者の健康条件を探索する。これまで共同研究のマホソート病院での認知症が疑われる患者は、精神科開業以来30年で2名であったが、昨年の調査で妄想症のある84歳男性の症例が1例あった。依然として病院での探索は難しいが、これも予想通りではあるので、引き続き医師との連携を継続していくことが重要と考えている。また、口コミで紹介された認知症患者は、これまでに近郊の村で2名確認している。研究交流事業として予定していた保健省のカウンターパート2名(精神科医師)を招聘し研究交流会を行う予定であったが新型コロナウィルス蔓延のため延期している。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルスの為に、研究交流事業が延期となり予算執行ができなかったため1年研究を延長したが、新型コロナウィルスのまん延が終息しなかったため、さらに次年度も1年間の延長を行った。海外渡航が可能になれば、高齢者の食事調査の残りのデータ数収集を行う予定である。今後、高齢者の健康調査の結果をまとめ高齢者の食生活および生活環境調査から、健康との関連因子を検索する。H28、30年度に行った2か所の村の全戸アンケート調査より経済成長による人々の暮らしの変化、特に収入や家電等の保有率の変化を解析し、生活習慣病との関係を評価する。また、延期されていたカウンターパートとの研究交流会も渡航が可能になり次第、実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:R2年度は、新型コロナウィルスまん延のため、予定していた海外調査および国内の学会やラオス・カウンターパートとの研究交流会が中止となったため、引き続き未使用額が生じた。 使用計画:R2年度未使用額は、海外渡航が可能になった時期に、予定通り研究交流事業を実施するとともに、高齢者の食事調査のデータを加えて、研究の総括を行う予定である。
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