研究課題/領域番号 |
16K00909
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研究機関 | 鈴鹿大学 |
研究代表者 |
翠川 薫 鈴鹿大学, こども教育学部, 教授 (20393366)
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研究分担者 |
村田 真理子 三重大学, 医学系研究科, 教授 (10171141)
中村 哲 広島文化学園大学, 看護学部, 教授 (40207874)
翠川 裕 三重大学, 医学系研究科, リサーチアソシエイト (10209819)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 国際研究者交流 / ラオス / アルツハイマー / 生活習慣病 / 生活環境 |
研究実績の概要 |
WHOは現在世界で5500万人の認知症患者が2050年には約3倍になり、特にアジア太平洋地域の低中所得国での患者が増大すると推定している。 我々は20年以上ラオスにおいて食や水環境が健康に及ぼす影響について検討し、高齢者の健康調査を行ってきた。近年ラオスではマラリア等の感染症は減少し、肥満と糖尿病が有意に増加してきた。生活習慣病は認知症発症のリスク要因であることから、これまでに高齢者を中心に健康調査を実施してきた。2017~2019年に65歳以上の健康診査を実施し、2007~2008の結果と比較したところ、BMI25以上の者が約40%、高血圧が約60%、糖尿病が疑われる者は約30%で、体重、血糖値およびHbA1cに有意な増加が認められた。また、認知症スケールが20点以下の認知症が疑われる者は、10年前では約40%であったのが、約60%と増加傾向にあった。また受診者75名のうち44名について朝食、昼食、夕食および間食の食事調査を行った。残りの30余名についての調査が新型コロナのまん延により現在中断されている。また、ラオス保健省のカウンターパートと研究交流会を行う予定であったが、引き続き新型コロナウィルス流行の為に予定を延期した為、さらに1年の研究延長を行った。ラオスでは、ゼロ・コロナを目指す政府の方針により、新型コロナ感染者数は日本と比較してかなり抑え込まれてきた。今年の5月以降に海外からの旅行者に課していた検疫隔離期間を撤廃する見込みであることから、2022年度に渡航が可能になる可能性は高い。日本でもコロナ禍による高齢者の認知症の悪化が懸念されている事から、ラオスのコロナ禍での現状について調査する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの長期の調査実績により当該国の研究機関および調査対象の村人との協力体制が確立されていることから、おおむね目標どおりの成果が得られている。 R1年度とR2年2月の2回に分けて行ったビエンチャン近郊2農村の65歳以上の75名の高齢者のうち、残りの30余名についての食事調査が新型コロナのまん延により現在中断されているため、海外渡航が可能になりしだい再開し、詳細な解析を行う予定である。また、このコロナ禍での2年間の高齢者の健康状態についても同時に調査を実施したい。日本では人とのつながりや外出機会の減少により、高齢者の認知症の増加が懸念されているが、ラオスにおいても同様であるか現状把握を行う必要がある。これまで共同研究のマホソート病院での認知症が疑われる患者は、精神科開業以来30年で3名、関係者の情報より紹介された患者は2名あった。依然として病院での探索は難しいが、これも予想通りではあるので、引き続き医師との連携を継続していくことが重要と考えている。今年度は、10年前の高齢者の健康調査結果と比較検討を行い、生活習慣病の増加についての報告を第92回日本衛生学会学術総会において成果発表した。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルスの為に、研究交流事業が延期となり予算執行ができなかったため、さらに1年間の延長を行った。海外渡航が可能になれば、高齢者の食事調査の残りのデータ数収集を行う予定である。今後、高齢者の健康調査の結果をまとめ高齢者の食生活および生活環境調査から、健康との関連因子を検索する。H28、30年度に行った2か所の村の全戸アンケート調査より経済成長による人々の暮らしの変化、特に収入や家電等の保有率の変化を解析し、生活習慣病との関係を評価する。また、延期されていたカウンターパートとの研究交流会も渡航が可能になり次第、実施する予定である。コロナ禍における高齢者の健康状態も懸念されることから、健康調査も追加で実施したいと計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
R3年度は、新型コロナウィルスまん延のため、予定していた海外調査および国内の学会やラオス・カウンターパートとの研究交流会が中止となったため、引き続き未使用額が生じた。 R3年度未使用額は、海外渡航が可能になった今年度9月または2023年2~3月に、予定通り研究交流事業を実施するとともに、高齢者の食事調査のデータを加えて、研究の総括を行う予定である。
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