軟食を3時間制限給餌で4週間、12週間あるいは24週間ラットに給餌しエネルギー代謝特性について検討した。軟食を摂取したラットでは、固形食を摂取したラットに比べ体重や摂餌量に差は認めず、体温、酸素消費量や行動量にも有意な差を認めなかった。一方で、軟食摂取ラットの内臓脂肪および皮下脂肪をCTで画像解析した結果、同ラットでは固形食摂取ラットに比べ内臓脂肪量、皮下脂肪量ともに有意に増加していた。また、4週間軟食で飼育したラットではインスリン値が高い傾向にあり、12週間および24週間軟食で飼育したラットでは、耐糖能試験において血糖値の推移が糖尿病パターンを示し明らかな耐糖能異常およびそれに伴う高インスリン血症を認めた。固形食摂取ラットにインスリンを投与すると肝臓でのAktのリン酸化が確認されたが、軟食摂取ラットではそれを認めなかった。軟食摂取ラットの肝臓では、高血糖や高インスリン血症がトリガーとなり中性脂肪の蓄積に機能する転写調節因子であるSREBP1cやChREBPの発現増加に加えその下流因子であるACCやFasnの発現も同時に増加していた。これらの知見は、軟食摂取ラットは肥満を示さないものの、糖尿病、高インスリン血症、インスリンシグナル伝達異常および脂質代謝異常を呈する日本人型糖尿病にきわめて近いモデル動物であることを示している。免疫組織化学的検討においても、4週間、12週間、24週間軟食を給餌したラットの膵臓の膵β細胞の過形成が確認され、36週まで軟食を給餌するとβ細胞は減少傾向を示すことが明らかになった。また、腸管のグルコーストランスポーターのタンパク発現を検討したところ、軟食摂取群ではSGLT1およびGLUT5の発現が固形食群に比べ有意に増加していた。次年度以降は、腸内細菌叢の変化や膵β細胞の過形成から減少に至る分子メカニズムの解明を目指し研究を展開させたい。
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