軟食を3時間制限給餌でラットに与えると、固形食ラットと比べ摂取カロリーや体温、酸素摂取量および行動量などのエネルギー消費について有意差を認めず、結果、体重差も認めなかった。一方で、軟食ラットの糖代謝は障害されており、耐糖能試験では糖尿病型を示し血中インスリン値は高値を示した。インスリンシグナル伝達に関して、両群ラットの肝臓で検討したところ、軟食群ではIRSの発現低下に加え、インスリン投与時のAktのリン酸化も著明に抑制されていた。高インスリン血症は軟食摂取4週後から出現し、インスリン抵抗性の程度は、軟食投与期間に依存して悪化していた。さらに膵臓のβ細胞は軟食摂取の比較的初期から増加していたが、36週以上経過したラットではβ細胞は減少に転じていた。本研究では自由摂餌下における軟食ラットのエネルギー代謝特性についても検討した。具体的には、脂肪組織における脂肪蓄積、脂質合成、炎症性因子の発現について固形食自由摂餌ラットと比較検討した。自由摂餌下での実験では、摂取カロリーは軟食群が固形食群を上回っていたが、体重は両群間で有意差を認めなかった。一方、酸素消費量や運動量といったエネルギー消費量については軟食群で高く、さらに軟食ラットの呼吸商の結果から同ラットは過剰に摂取したエネルギー(特に脂質)をより高く消費することで、体重を維持していると考えられた。さらに体組成を比較してみると、軟食ラットでは内臓脂肪比率および皮下脂肪比率のいずれもが固形食ラットを上回っていた。軟食ラットの腸間膜脂肪組織では、脂肪酸合成酵素の発現が増加しており、ACCのリン酸化の低下と併せて脂質合成が促進していることが明らかになった。脂肪細胞の直径も軟食ラットの方が明らかに大きかった。さらに軟食ラットの腸間膜脂肪組織では、MCP1の発現増加とそれがMAPKシグナルを介して起こっていることも明らかになった。
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