研究課題/領域番号 |
16K00913
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研究機関 | 新潟県立大学 |
研究代表者 |
太田 亜里美 新潟県立大学, 人間生活学部, 准教授 (30567269)
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研究分担者 |
菖蒲川 由郷 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (30621198)
村山 伸子 新潟県立大学, 人間生活学部, 教授 (80219948)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 低栄養 / 食品摂取頻度 / 運動 / 多様性評価票 / 地理情報システム / ソーシャルキャピタル |
研究実績の概要 |
高齢者においてBMI<20(以下低栄養傾向群)は、BMI≧20群と比べて死亡率、要介護率が高い事が分かっている。低栄養傾向群の割合には地域差があること、食と運動が予防につながることが分かっているが、地域別の食の特性については明らかでない。またソーシャルキャピタル(地域の人々の結びつき、助け合い)と運動頻度との関連は検討されているが食事との関連については検討されていない。 BMIと関連する食品、食品群の検討など個人的な要因さらに地域的な要因を検討するため、新潟市の高齢者10000人を対象とした食品摂取多様性評価票を取り入れた自記式アンケートを行う。申請者らの研究で愛知県の高齢者大規模アンケートと健診結果をあわせたデータから、『肉・魚』の摂取頻度が低い群で有意に血清アルブミン値が低値(低栄養)であり、その背景に所得や教育歴があり、地域差も認めている。本研究では熊谷らの開発した『食品摂取の多様性評価票』を使用する。10食品の食品摂取頻度を点数化し、点数の低い群では要介護率が高いことが明らかになっており、高齢者が解答しやすいという利点もある。個人の要因として、BMIと関連する食品摂取群の摂取との関連(肉・魚の摂取、卵や豆など)を、性、年齢、教育歴、所得、家族構成、運動頻度などで補正した重回帰分析を行う。地域的要因については、新潟市の8自治体または56中学校区で検討し、地域因子として高齢化率、病院、公共施設の数/人口、地域の平均等価所得、ソーシャルキャピタルの指数などを取り入れ、マルチレベル分析を行う。 食とソーシャルキャピタルの関係について明らかにし、さらに共食の場を高齢者の地域活動の場『茶の間』に提案していくこと、さらに本研究結果をもとに、高齢者側からの需要、要求にあわせた地区別食事運動プログラムを作成・実践していきたいと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は域別の食品摂取頻度、運動習慣のある人の割合、また人地域の人の結びつきであるソーシャルキャピタルなど地域の指標と低栄養傾向群との関連の検討を行うため、新潟市で高齢者の大規模アンケート調査を行った。 平成28年新潟市高齢者大規模調査は、平成25年に新潟市内全域の要介護認定を受けていない高齢者8000人を対象とし約5000人から回答を得ており、平成25年の回答者と平成25年以降65歳になった高齢者から無作為に抽出した5000人を合わせた計10000人を対象とした。前回の調査以降、要介護認定を受けた、死亡、他の市町村への転居により、9971人にアンケート調査を郵送し、12月に回収を行い、7134人より有効回答を得られた(有効回答率71.5%)。本調査においては、全国調査の日本老年学的評価研究(JAGES)と共通項目のほか、食品摂取の多様性評価票、運動頻度(農作業、家庭菜園などもいれて)を項目に追加した。 地図情報システム(GIS)により、中学校区別に食品摂取の頻度の地域差の有無、原因となるスーパー等の環境の有無も分析に加えていく。分析結果より、運動、食への関心が強いグループのBMIが低い傾向があることもわかり、栄養傾向群(BMI<20以下)の要因の分析とともに、追跡調査の可能であった(2013年、2016年の両方に回答)群の体重減少に焦点をあてた分析をはじめている。継続的な低BMI群より、体重が減少した群が、フレイル(虚弱)群をとらえている可能性が示唆され、今後両グループにおいて、関連する個人の食、運動状況、社会経済要因、地域環境要因を検討していく。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、中学校区レベルの地域の要因データを作成、地域の低栄養傾向群の割合との関連を検討していく。国勢調査(2015)、高齢化率、世帯密度、病院、食品販売店、公共施設、高齢者の地域交流の場『茶の間』近隣のバス停などの住所検索を行い、地図データベースをつくる。さらには地域環境要因と食品摂取頻度、運動頻度との関連を検討する。地域差の比較のためには中学校区別のデータから中学校区レベル、自治体レベルでのマルチレベル解析を行う。またアンケートで地域への信頼、他の人に役にたとうと思うか、他の人は信頼できるとおもうか、などの項目を聞いており、人と人とのつながりのソーシャルキャピタルと食と運動との関連につき検討する。 また地域別(自治体区、中学校区)の低栄養傾向群の割合、各食品摂取頻度の状況を地図で『見える化』する。地域の健康指標である低栄養傾向群の割合、食品摂取の地域性を地図にて視覚化し、自治体や住民への問題意識につながることを期待する。 また供食頻度の増加や町内でのおすそ分け等などにより、『食』が地域の人と人とのつながり、ソーシャルキャピタルに関連している可能性がある。ソーシャルキャピタルの形成の可能性のある『茶の間』で本研究の分析結果および高齢者側からの需要、要求にあわせた地区別食事運動プログラムを作成・実践にむけて、本年度は高齢者側の共食へのニーズなどの聞き取り調査を『茶の間』で行いたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
中学校区別の地域要因分析にむけて、平成 27 年国勢調査データの中学校区レベルのデータの購入を予定していたが、総務省統計局から小地域での結果が公開されてからの販売となるため、購入できなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成 27 年国勢調査データの中学校区レベルの地図(地理情報システム用)を販売次第、購入予定。
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