勤労者の健康増進と生活習慣病の予防を進めるためには、産業保健の場における栄養・食生活の面からのサポート体制を確立することは重要であると考えられる。本研究では、産業保健における食育等の効果を客観的指標により詳細に解析し、検討することを目的とした。研究協力の承諾が得られた複数の職域において、高血圧罹患者の割合が高いことが健康課題としてあげられた。そこで、平成30年度は、平成29年度に引き続き、対象職域において、スポット尿を用いた推定食塩摂取量の算出及び尿中Na/K比値の測定を行った。また、アンケート調査により、塩分摂取に関する状況・意識等の解析を実施した。対象職域においては、推定食塩摂取量が高い群では、低い群に比べて、血圧が高く、また、塩分摂取に関する意識の状況が良くないことが示された。また、対象者の年代別で解析を行ったところ、20代の若い年齢ほど食塩摂取量が高い一方で、Na/K比が高値であり、K摂取量が少ないことが推察された。また、食塩の摂取源となる食品の種類においても各年代間で差異が認められた。そのため、引き続き、減塩に関する取り組みを行うとともに、各年代の特徴に合わせた取り組みの必要性が示唆された。対象職域の勤労者には、本研究結果を返却する個人シートを作成し、減塩に関する情報とともに返却をした。また、交代制勤務のある職域では、主食・主菜・副菜の食事の3要素の組み合わせが揃っているかいないか等の検討も実施した。交代勤務を行っている勤労者では、欠食者が多く、さらに3要素を揃えて食べる割合が日勤群よりも低いことが明らかとなった。これらの点をサポートしていく必要性があると考えられたため、今後も引き続き、対象職域の産業医、産業保健師等と連携し、栄養・食生活面からのサポート体制の確立を目指した研究を進めたいと考える。
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