研究課題/領域番号 |
16K00918
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研究機関 | 福岡女子大学 |
研究代表者 |
水元 芳 福岡女子大学, 国際文理学部, 准教授 (20581630)
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研究分担者 |
中澤 港 神戸大学, 保健学研究科, 教授 (40251227)
太田 雅規 福岡女子大学, 国際文理学部, 教授 (70341526)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 食事調査ツール / 太平洋島嶼国 / ミクロネシア / 肥満 / 妊産婦 |
研究実績の概要 |
心臓病や脳血管疾患といった死亡に直結する生活習慣病に深く関与する肥満の割合は増加を続けている。大洋州の島嶼国での肥満率は欧米を大きく上回り,いずれの国も女性の肥満率が高い(フィジー:男性30.8%,女性42.3%;ミクロネシア:男性31.0%,女性43.7% 等)。先行研究においてミクロネシア成人女性の著しい体重増加は妊娠期間,そして授乳期間に集中していることが示唆されたが、妊娠・授乳期間中の体重増加に関する先行研究はなく,また,食事摂取量と具体的な内容についてもその実情は明らかにされていない。2008年,ハワイ大学研究チームは大洋州における食品成分表を基盤としたデータベース,およびThe Pacific Tracker (PacTrac)と呼ばれる食事調査ツールを開発しているが,ミクロネシアにおいてこのツールを用いた調査はまだ行われていない。PacTracでは食事量をアメリカ式ポーション・サイズで入力することが求められているが,ミクロネシアでは食事を個人用の皿に取り分けないため、ポーション・サイズでの個人の摂食量の把握は困難である。対象者の食事摂取状況評価に基づいた適切な食事指導は,特に妊娠・授乳期では母子の健康の観点から重要である。個々の食事指導につなぐための食事調査のツールは,食事指導にあたる保健スタッフが日常的に簡便に使用できるものが望ましいが,太平洋島嶼国での伝統的な食事スタイルまで考慮されたそのような調査ツールは不在である。本研究では,保健スタッフが日常的に簡便に使用でき,対象者の食事摂取状況を正しく把握・評価できる太平洋島嶼国での伝統的文化背景を考慮した食事調査ツールの開発を目的として、平成28年度は予備調査、および24時間思い出し法および写真記録法による食事調査の実施準備の補助員リクルートなどを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究初年度となる平成28年度は、1)予備調査としてミクロネシア女性の妊娠期間の体重変動の実情を確認するため,ポンペイ州保健局が所有している妊婦健康診査のデータを整理・分析、2)食事調査のための補助員のリクルートとトレーニング、3)食事調査(24時間思い出し法、写真記録法、PacTrac食事調査)を実施する予定であったが、本研究協力機関であるポンペイ州保健局では8月に局内での大幅な人事異動があり、母子保健担当部署でも主要スタッフが変更した。そのため通常業務に加えての研究活動協力体制確保まで時間を要して研究活動始動が遅れ、上記1)については現在データを分析中、2)の活動については局外の団体の協力を得て調査補助員リクルートまでが終了した段階である。なお、本研究で中心となる協力機関はポンペイ州保健局であるが、事前に話を進めていた母子保健部署でのスタッフの異動などの事情のより調査補助員は、調査地の人々の「食」に精通した人材として、同州でローカル食推進などの活動を行っているNGOより選出した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に実施できなかった食事調査である24時間思い出し法、写真記録法、PacTrac食事調査を平成29年度前半に実施する。24時間思い出し法と写真記録法による食事調査は同一対象者同時期に行うこととする。対象者は妊娠の可能性を持つ,または妊娠中の女性20名程度(ポンペイ州都市部:Kolonia Townで10名,地方部:Kolonia Town 以外から10名)、24時間思い出し法は,ある1カ月間のうち連続しない7~10日で補助員の協力を得て行う。食事の写真撮影のために対象者全員にデジタルカメラを貸与し,調査期間を通して食べたものすべてを撮影してもらう。なお,対象者には調査期間の食事は個人のプレートに取り分けて食べてもらうよう,サイズの同じ皿を配布する。24時間思い出し法での聴き取りは,該当日に撮影した食事の写真を見ながら行うこととする。 PacTrac調査の対象者は上記食事調査対象者で、食事調査実施後、ハワイ大学が開発したPacTracツールを用いて,連続しない3日間の食事の聴き取りを補助員の協力を得て行う。24時間思い出し法と写真記録法による食事調査結果との相関を確認するためのコンピューターによる分析を行う。 これらの調査得たデータを分析,取りまとめし,ミクロネシア版FFQ調査票の項目を仮決定,および「肥満につながるリスク食品」と「問題のある食行動」を把握するための質問項目を盛り込んだ調査ツールを作成し、プレテストを行う。 プレテスト対象者は,妊娠の可能性を持つ,または妊娠中の女性に加えて授乳婦を含み,ポンペイ州保健スタッフによる聴き取り式で行い,同州5カ所の保健センターで計100名のデータを収集する。 なお、平成29年度、当初予定していなかった研究活動の実施はない。平成28年度実施予定として計上していた予算のうち、諸事情によって実施できなかった研究活動の費用を平成29年度に使用予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究協力機関であるポンペイ州保健局では8月に局内での大幅な人事異動があり、母子保健担当部署でも主要スタッフが変更した。そのため通常業務に加えての研究活動協力体制確保まで時間を要して研究活動始動が遅れた経緯がある。平成28年度の研究活動のうち実施できなかったものは平成29年度に実施する予定。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越し分の、物品費、357,785円、旅費360,121、謝金72,336、その他198,408 計988,650円は、24時間思い出し法、写真記録法、PacTrac食事調査に使用する予定。
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