研究課題/領域番号 |
16K00923
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研究機関 | 松本歯科大学 |
研究代表者 |
安藤 宏 松本歯科大学, 歯学部, 准教授 (30312094)
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研究分担者 |
今村 泰弘 松本歯科大学, 歯学部, 講師 (00339136)
増田 裕次 松本歯科大学, 総合歯科医学研究所, 教授 (20190366)
北川 純一 松本歯科大学, 歯学部, 教授 (50373006)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | TRPチャネル / TRPV1 / TRPM8 / 上喉頭神経 / 咽頭 / 喉頭 / 嚥下 |
研究実績の概要 |
咽頭・喉頭領域を飲食物が通過するときの感覚は、摂食・嚥下に重要と考えられる。Transient Receptor Potential (TRP)チャネルは、化学物質や温度を受容するので、咽頭・喉頭領域への化学刺激や温度刺激にも応答すると推測される。 平成28年度はカプサイシンに応答するTRPV1チャネルとメントールに応答するTRPM8チャネルの発現を、咽頭・喉頭領域を支配する上喉頭神経(SLN)の感覚神経の細胞体を含む神経節において調べた。この神経節はnodose ganglion (NG)、petrosal ganglion (PG)、 jugular ganglion (JG)が癒合しnodose-petrosal-jugular ganglionic complex (NPJc)を形成している。NPJcには、SLN以外にも舌咽神経など様々な神経の細胞体が混在するため、逆行性トレーサーのフルオロゴールド(FG)をSLNの末梢支配領域へ注入し、NPJcにおけるSLNの細胞体を同定した。また咽頭・喉頭領域をカプサイシンやメントールで刺激し、SLNから神経応答を記録した。 FG陽性の細胞体は、NG、PG、JGのいずれにも観察された。FGとTRPM8の両方に陽性の細胞は、NGとPGで差が見られなかったが、FGとTRPV1の両方に陽性の細胞は、NGの方が PGよりも少なかった。TRPM8陽性細胞の約半数は、TRPV1にも陽性であった。加えて、TRPM8あるいはTRPV1陽性細胞の多くは、有髄神経マーカーNF200に陰性でありこの神経の多くは無髄神経であることが示された。咽頭・喉頭領域へ投与したカプサ イシンやメントールに対するSLNの神経応答は、濃度依存的に生じた。 以上よりSLNに支配される咽頭・喉頭領域への化学刺激の応答にTRPV1とTRPM8チャネルが関与していることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Transient Receptor Potential (TRP)チャネルは、化学物質や温度の受容をする。咽頭・喉頭領域の化学物質や温度による刺激に対する反応に、TRPチャネルがどのように関与するのかを調べた。 平成28年度は(1)免疫組織学的方法により、咽頭・喉頭領域を支配する上喉頭神経(SLN)の感覚神経においてTRPチャネルの発現を調べることと(2)電気生理学的方法により、咽頭・喉頭領域へ化学刺激をした時の、SLNの感覚神経応答におけるTRPチャネルの関与を調べることを計画していた。 (1)免疫組織学的実験において、カプサイシンや43℃以上の温度を受容するTRPV1チャネルと、メントールや25℃以下の温度を受容するTRPM8チャネルの発現をSLNの感覚神経の細胞体が存在する神経節において観察した。両チャネルの発現している細胞の数を計測し、神経節における分布の違いが観察された。進行はおおむね予定通りである。 (2)電気生理学的実験において、咽頭・喉頭領域へのカプサイシンやメントールによる化学刺激に対するSLNの神経応答を記録することができた。当初は、これらの反応に対する、TRPチャネルの阻害剤の効果も調べる予定であったが、現在のところ顕著な効果が観察されていない。おそらく阻害剤の投与方法の問題であると考えられるので、改良する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
今後も咽頭・喉頭領域に発現するTRPチャネルの働きについて、(1)免疫組織学的実験と(2)電気生理学的実験の両方を行う予定である。 (1)免疫組織学的実験においては、これまでTRPV1とTRPM8について調べたので、この他のTRPチャネルの発現についても同様の方法で調べる。52℃より高温に反応するTRPV2、32℃以上の温度に反応するTRPV3、温かい温度に反応するTRPM5 、17℃以下の低温やワサビやからしに含まれるアリルイソチアネートに反応するTRPA1などを予定している (2)電気生理学的実験においては、TRPチャネルの阻害剤の効果を調べる予定である、現在の投与方法では効果がはっきりとわからないため、改良をする必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
所要額の96%以上を使用しており、ほぼ予定通りの使用であった。平成29年度もTRPチャネルの抗体や阻害剤等の試薬に費用が掛かることが考えられるので、平成28年度で使い切ってしまわず、平成29年度へ繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
TRPチャネルには平成28年度調べなかったTRPV2やTRPA1など多数のチャネルがあるため、それらのTRPチャネルの抗体を購入し、免疫組織学的実験に使用する予定である。
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