研究課題/領域番号 |
16K00924
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研究機関 | 朝日大学 |
研究代表者 |
硲 哲崇 朝日大学, 歯学部, 教授 (90243154)
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研究分担者 |
諏訪部 武 朝日大学, 歯学部, 准教授 (00610312)
安尾 敏明 朝日大学, 歯学部, 助教 (30608469)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 味覚 / 味覚嫌悪学習 / 味質識別 |
研究実績の概要 |
前年度まで我々は、ラットを用いた行動学的実験により、ラットが混合味溶液中の含有物を十分認識する能力があることを明らかにするとともに、この含有物の濃度次第では、お互いの含有物の識別を阻害する可能性があることを明らかにした。加えて、本年度は、以下の成果を得た。 (1) 味覚を伝える神経は、1種類ではなく、過去の報告から、各神経種ごとに、各種味質に対する応答性が異なることが知られている。そこで、本年度は、鼓索神経と舌咽神経を切断されたラットが、混合味溶液の識別行動をどのように変化させるのかを調べた。その結果、両側舌咽神経切断では、健常なラットの混合味溶液識別行動と差が認められなかったが、両側鼓索神経切断では、条件刺激溶液に対して味覚嫌悪を、1回の条件刺激-無条件刺激(塩化リチウムの腹腔内注)追提示で獲得させることが困難であり、2回の追提示で味覚嫌悪を獲得させることができたが、このラットも、含有物を十分に認識した。 (2) 味覚刺激と体性感覚刺激の混在刺激に対する行動応答を調べるため、25℃の0.1M ショ糖溶液に味覚嫌悪を条件づけたラットの各種温度各種濃度のショ糖溶液に対する10秒間リック数を調べた。その結果、提示されたショ糖溶液に対するリック数は、高温の物の方が低温のものより低い傾向が観察され、味覚の識別には溶液温度が関与している可能性を示した。 (3) 混合溶液の識別に関与する脳部位を検討するため、味覚嫌悪学習獲得に重要な扁桃体をイボテン酸により破壊したラットの行動応答変化の確認を試みた。しかしながら、両側扁桃体のピンポイントでの破壊は、技術的に非常に困難であり、本年度内での解明には至らなかった、このため、中枢実験に関しては、次年度に向けて、現時点で、より大きな成果を得ている末梢神経実験にフォーカスした実験計画変更を視野に入れることを検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画していた中枢破壊実験は、当初の想定よりも技術的に非常に高度なテクニックを必要とし、コストパフォーマンスの悪いものとなってしまったため実験の遂行がやや遅れてしまった。 この反省を踏まえて、次年度の計画は、以下の「今後の研究の推進方策」に記載したとおりとし、この現状を打破したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究のメインテーマは、複数の口腔感覚刺激に対して生体がどのように行動応答を起こすか、および、その神経機序の解明にある。そのため、末梢神経系と中枢神経系の両方の視野から研究を進めてきたが、中枢神経系の実験成果に比べて、末梢神経系での実験成果の方が、よりコストパーフォーマンスの高い成果が得られることがわかってきた。そこで、次年度は、予算および実験動物の有効利用の観点も踏まえ、末梢神経系での実験にフォーカスをあてた実験をメインとして遂行することを検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
中枢破壊実験に当初想定した以上に時間がかかってしまったこと、ならびに、その結果を踏まえて次年度に向けて全般的な研究計画を再検討し、実施するための予算が必要となると判断したため。 本研究計画は、前年度を通じて末梢神経系実験でのアプローチと中枢神経系実験でのアプローチの2面あるが、これまでの研究成果から末梢神経系の実験によりコストをかけた方が、より有意義な成果が得られることがわかってきたため、そのための実験予算を中心に有効利用する予定である。
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