研究課題/領域番号 |
16K00926
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研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
千原 猛 藤田保健衛生大学, 保健学研究科, 准教授 (00217241)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | がん悪液質 / 経口栄養食品素材 / Minマウス |
研究実績の概要 |
がん患者のQOL(Quality of Life)の維持向上のため様々な研究が行われているが、その中で最も対策が遅れているのが、終末期がん患者に多く見られる「悪液質」に対するものである。終末期がん患者の多くに見られる悪液質は、飢餓状態とは異なる体重減少が見られ、それには生命の維持に不可欠な骨格筋量が減少する代謝異常を伴っており、一旦罹患すると栄養治療の効果は期待できないとされている。しかしながら、連携研究者らは終末期がん患者様用の「症状・機能改善補助食品」を開発し、その有用性を報告した。その報告は、細胞内エネルギー代謝に関連する栄養素(経口栄養食品素材)の投与はがん悪液質症状の緩和に有効かもしれないことを示唆するものであった。 そこで、申請者はエネルギー源となる栄養素(3種類)を基礎飼料に混餌し、雄性Min(multiple intestinal neoplasia)マウスに8週間投与を行った。Minマウスは申請者が維持、繁殖している家族性大腸腺腫症モデルマウスで、悪液質モデルマウスにもなり得ることが報告されている。8週間後に心臓採血による安楽死後に主要臓器および大腿四頭筋、腓腹筋、ヒラメ筋を摘出して重量を測定した。その結果、3種類中の1種の投与群において、体重および大腿四頭筋の減少抑制傾向がみられた。また、腫瘍細胞は嫌気性呼吸にてエネルギー産生を行っており大量のブドウ糖を消費するため血中に多くの乳酸が放出され、乳酸のリサイクリングに関与するCoriサイクル活性化によるエネルギー消費亢進が考えられるが、その投与群は血中乳酸値上昇も抑制傾向であった。現在、炎症性サイトカイン値をはじめ、悪液質により変動すると考えられる項目について測定を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究進捗がかなり遅れている。その理由として、昨年4月から大学内の配置転換により新たな研究室および動物施設で研究を開始した。環境の変化に対するマウスへの影響は懸念していたが、やはり悪液質モデルマウスであるMinマウスの繁殖率が下がり、実験に供与する匹数を得るために非常に時間を要した。現在、繁殖率は上がりつつあるが、また低下する可能性もある。 Minマウスは主に小腸にポリープが自然に多数発生した後に悪液質症状を示すモデルであるため、経口食品素材等を用いる研究においては有用モデルであると考えている。少し時間が必要とするかもしれないが、終末期がん患者様の症状緩和につながる経口食品素材の検索の一つのモデルとして使用し、基礎研究から有用な情報を臨床へ発信していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
まず、現在進めているエネルギー源の栄養素(経口食品素材)を投与した実験において、悪液質で変動すると考えられる項目についての測定を終了させる。これらの項目の変動は今後の研究の測定項目を決定するものと考えられる。 次に、Minマウスのみを悪液質モデルとしての研究では非常に時間を要するので、新たなモデルとして大腸癌細胞移植モデルマウスを作製して研究を進める。昨年検討した栄養素はもちろんのこと、連携研究者らが開発した終末期がん患者様用の「症状・機能改善補助食品」の含有成分(栄養素)の検討を一昨年に引き続き慎重に進めたい。単品で検討するもの、細胞内エネルギー代謝を考慮し2種類あるいは3種類を混合して検討するものに分けて研究を進めたい。大腸癌移植モデルは早く研究を進めることができると考えられるので、この研究で効果が期待できる栄養素をMinマウスでも検討したい。なお、大腸癌移植モデルマウスとMinマウスでは、腸管、特に小腸の状態より投与した栄養素の吸収により効果に差が生ずる可能性がある。その時には、Minマウスに腸管機能保持に有用な経口栄養食品と悪液質に有用と考えられる栄養素との同時投与による検討も実施したい。 いずれの悪液質モデルにおいても、体重および筋肉量減少の抑制効果、炎症性サイトカイン値、乳酸値への修飾作用、炎症性サイトカインの関与が明らかになってきているがん末期における食欲不振への影響として摂食量を検討する。さらに、エネルギー代謝への影響として糖質代謝、脂質代謝、摂食促進および摂食抑制ホルモンに及ぼす影響を測定し、より有用な悪液質症状緩和のための経口食品素材を見出したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究に使用している悪液質モデルマウスであるmultiple intestinal neoplasia (Min)マウスは、申請者が維持、繁殖をしDNAでタイピング後に研究に使用しする。昨年度は4月に大学内の配置転換により、新たな研究室、動物施設で研究を開始したことによる環境変化のためか、Minマウス繁殖が悪く研究に使用する匹数を準備することできず、予定通りに研究を進めることができなかった。 助成金の使用計画としては、栄養素(経口食品素材)を購入するとともに、経口食品素材の中で固型飼料に混合できるものは、実験効率を上げるために混合固型の試験飼料を作製する。それ以外の助成金は、実験動物および動物飼育に関連するもの、炎症性サイトカイン測定用のELISA測定キット、乳酸測定キット、糖質および脂質代謝への修飾作用を確認するための中性脂肪測定キットおよび代謝酵素のmRNA発現レベルを測定するためのPCR用試薬、プラスチック消耗品などに使用予定である。
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