白血球の一種であるマウスマクロファージ培養細胞株J774.1細胞の貪食(異物の取り込み)作用を検討するため、これまで蛍光顕微鏡をもちいた観察を行ってきたが、作業中に細胞が乾燥してしまう問題があったため、蛍光顕微鏡による観察と異なる方法として、マクロファージ細胞の活動の指標となる遺伝子の発現をmRNA量を指標として測定した。 マクロファージは、取り込んだ異物を消化するために細胞内のペルオキシソームやリソソームを用いる。今回はペルオキシソームの指標となるPXMP2遺伝子のmRNA量を測定した。しかし、マクロファージにリポテイコ酸やリポ多糖を添加しても、乳酸菌を添加しても、ペルオキシソーム増殖剤であるトログリタゾンやベザフィブラートを添加しても、PXMP2遺伝子のmRNA量の増加は認められなかった。これらのことから、ペルオキシソームを指標として乳酸菌の効果を測定することは困難であると考えられた。マクロファージが取り込んだ異物を分解する様子を評価するためには、リソソームに着目する方が良いかもしれないと予想されるため、今後の研究が必要である。 一方、マクロファージが異物を取り込んだ後にその情報をTリンパ球に伝えるIL-12b遺伝子およびCCL12遺伝子のmRNA発現量は、リポテイコ酸、リポ多糖および乳酸菌の添加によって有意に増加した。市販の発酵乳食品から培養した乳酸菌でも、IL-12b遺伝子およびCCL-12遺伝子のmRNAの増加が認められた。CCL12遺伝子は乳酸菌の添加が多すぎるときに返って減少するのに対し、IL-12b遺伝子は乳酸菌の用量が多いときでも増加した。この2つの遺伝子に対する乳酸菌の作用の違いが、マクロファージを通じてリンパ球へのはたらき掛け方を変えることにより、アレルギーの抑制に繋がっている仮説が考えられる。
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