肥満の維持・増悪には、空腹―満腹感によらない食の報酬的側面が関与している。ニコチンやアルコールなどの薬物依存にもみられる報酬的側面は、肥満治療を困難なものにしている一因である。抗肥満薬には有害事象のため使用中止となったものがある。胃のバイパス形成術も身体への侵襲を伴う。認知行動療法も治療動機の低い症例には効果的ではない。本研究で得られた肥満に伴う脳内報酬系ドパミン神経の興奮性の上昇は、ニコチンやアルコールなどの薬物依存形成時にも認められる現象である。従って、薬物依存治療に有効な方法の中には、脳内食報酬形成を阻害し、肥満に伴う食行動異常を是正する可能性を持つものがあると推測できる。
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