代表的な食品の機能性成分であるポリフェノールは、植物の色素や苦味の成分で、いずれも強い抗酸化力を持つことが示されている。医用植物として知られるマリアアザミ(Silybum marianum:ミルクシスル (Milk thistle))の種子は古くから肝疾患治療薬として民間療法に使用されてきた。ポリフェノール化合物の一種であるSilymarinはマリアアザミ種子から抽出されたflavonolignanの混合物で、主な活性成分は、Silybin(またはsilibinin)、silychristin、silydianin等である。この中でSilybinが最も生物活性が高いflavonolignanであり、肝臓保護物質としてだけでなく、糖尿病患者のインスリン抵抗性を低下させることも報告されている。現代社会において、生活習慣病は増加の一途を辿っており、ストレス負荷は増悪要因となっている。 本年度は、生活習慣病へのSylimarin及びSilybinへの影響に着目し、ストレス負荷により増加するカテコールアミン(CA)生合成・分泌への影響についてウシ副腎髄質細胞を用いて、また同じくストレス負荷により上昇する血糖値への影響を膵β細胞由来細胞株MIN6細胞でのインスリン分泌を測定することで検討した。 本年度の主な研究成果は以下の通りである。Silymarin類の中で、silybinが最も強くアセチルコリン受容体刺激によるCA分泌の抑制作用を示した。Silymarinとsilybinはグルコース刺激によるインスリン分泌を濃度依存性に抑制した。Silymarinとsilybinはグリベンクラミドによるインスリン分泌作用に殆ど影響しなかった。Silybinはグルコース取り込みとカルシウム流入を抑制した。インスリン分泌機能調節における作用機序については今後の検討課題である。
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