1給食提供までのリスク管理:保育所及び学校の調理場内において、鶏卵は、鶏卵そのものを主体とした料理を提供した食器に洗浄後も残存する傾向にあること、また小麦粉は粉体であるため調理室内に飛散する可能性があることが明らかとなった。したがって、鶏卵を用いる場合には、食物アレルギー児用の食器を別に設けることが望ましいこと、小麦粉を扱う場合には、混入を避ける工夫が求められた。 2給食提供後のリスク管理:配膳やランチルームでの鶏卵、牛乳、小麦の新たな混入はみられなかったが、食事中に誤って牛乳に触れる、あるいは提供された給食から原因食物のとりわけによる誤食事例がみられたことから、食物アレルギー児童生徒の食事中の管理及び症状誘発時の円滑な対応が望まれた。 3給食献立におけるリスク管理:昨今の学校給食では、鶏卵、牛乳、小麦の使用頻度が大豆に比較して少ない傾向であった。その背景には、業務用食材で上記原因食物不使用の製品・調味料が普及するようになり、通常給食への導入で業務軽減とリスク軽減の一助となっていた。一方、大豆アレルギーの対策はなされていなかった。上記原因食物に加えて大豆を除いた献立作成を行うと、材料が限られて献立が成り立ちにくく、栄養素のバランスや作業負担が大きくなる可能性があり、個別対応を考慮すべきと考えられた。 4前述の成果をもとに、自治体の給食施設における食物アレルギー対応マニュアルを作成するとともに、保育・教育施設関係者向け食物アレルギーセミナー・講演会などを通して報告・広報活動を行った。また栄養士・管理栄養士他関係者向け専門書を作成し、養成校にて「食物アレルギーの栄養指導」科目を新規開講した。さらにアレルギー関連学会協働のもと、日本栄養士会における専門の知識と技術を有する栄養士・管理栄養認定制度を専門的立場として立ち上げに協力した。
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