本研究は、産業技術総合研究所地質調査総合センターから公開されている「20万分の1日本シ-ムレス地質図」(以下、シームレス地質図)を活用して、中学校理科・高等学校地学で利用可能な教材の作成と学習方法の検討を行い、その学習効果を検証する。本年度の実績は以下の通りである。 1.シームレス地質図の中から、中学校理科地学分野と高等学校「地学基礎」の学習内容に適合する地質事象を吟味するため、特に仙台周辺地域の新第三系と気仙沼-大船渡地域の古-中生界の事象について現地確認を継続し、その有効性を確認した。 2.シームレス地質図改訂版(ver.2)を利用した学習モデルを検討した。特に追加された簡易凡例版の利用によって、生徒がより迅速に地域の地質の成り立ちに関して把握して理解できることが確認された。 3.前年度の理科教員研修での改良意見を参考として学習モデルを検証し、仙台市北部地域において、特に未詳であった中新世末期の陸成層の地質年代と堆積相を明らかにし、シームレス地質図を利用した教材化の観点を整理して学習方法を提案した。また、気仙沼地域において、ペルム紀~三畳紀の産出化石資料を整理して展示方法を検討した。その結果、地域の地質の時空分布の把握から発展させて、過去から現在までの地質の成り立ちの歴史と環境の変遷を理解する上で高い効果があることが確認された。 4.宮城教育大学の理科教員研修、気仙沼地区の理科教員研修やジオパーク協議会などにおいて、シームレス地質図を活用した学習モデルについて紹介して普及を図った。
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