研究課題/領域番号 |
16K00958
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研究機関 | 愛知教育大学 |
研究代表者 |
幅 良統 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (60377950)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 天文教育 / 視覚障がい |
研究実績の概要 |
本研究は、天体観測で得られる視覚情報を音声情報へ変換することで、視覚に障がいのある人々に天体観測を身近に感じてもらうことを目的としている。 本年度は,焦点面にカラーCCD(SONY製ICX694)を用いることで,星の色を判別し,色に応じた音階を出力するプログラム開発を行った.また,新たに焦点距離16mmのレンズ(RICOH製FL-BC1618-9M)を使用することで,代表的な星座が一視野に収まるようにした. 星の色に応じた音階を決定するため,同一の星座を複数回測定し,検出された各星のR(赤),G(緑),B(青)を測定し,全光量に対する割合を求めた.その割合を星のスペクトル型ごとに平均したところ,高温度のスペクトル型になるにつれ,Bの割合が上昇(Rの割合が減少)し,Gの値はスペクトル型によらずほぼ一定であることが分かった.そこで,検出された星のBとRの比を星の色指数とし,その値に応じた音階を設定した.一方,人の聴覚は音の周波数によって感度が異なるため,物理的に同じ音圧であっても,感じる音量(ラウドネス)が異なる.本研究では,星の光量を音量に変えるため,同じ明るさで色の異なる2つの星を比べた時,できる限り同じ音量を出力することが望ましい.ISO226:2003によると,500~1500Hzの音については,同じ音圧に対するラウドネスの変化が少ないことから,本研究においても,使用する音の周波数範囲を上記に制限した. 音の再現にあたっては,単純なsin波とし,Bの割合が0~100%まで変化することに合わせ,音階を498.883 Hzのシから1567.982 Hzのソまで変化させた.最終的に,代表的な星座である,うしかい座やオリオン座を観測し,それらを構成する星を明るい順に音声出力するプログラムを完成させた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の目標は,カラーCCDを用いて星の色を判別し,その色情報を音階情報として出力するシステムの構築であった.本研究で使用するカラーCCDがどこまで星の色を判別できるのかを検証したところ,RGBの内,RもしくはBの全光量に対する割合によって,星のスペクトル型を分類することが可能であることが分かった.これにより,星の色情報を音階へと変換できる糸口が得られた.また,当初は,色情報を音階情報へ変換する際,なるべく極端な周波数差をつけることで色の変化を認識しやすくすることを考えていたが,人の音圧感度(ラウドネス)が周波数によって異なることが分かったため,出力する音階の範囲を,ラウドネスがほぼ一定となる500~1500 Hzとした.これにより,色の異なる星であっても,明るさが同じであれば,同じような音量を出力するプログラムを構築することができた. 以上のように,全体としてほぼ計画通りに研究を推進できている.
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今後の研究の推進方策 |
本年度までの研究により,撮影した星の明るさ・色を自動的に音量・音階として出力するプログラムを構築できた.今後はこのシステムをより洗練されたものに改良していくとともに,実際に,視覚に障害のある方にシステムを使用していただき,改善点を検証する. 現システムでは,音を再現する際に単純な三角関数を用いているが,これで出力される音声は極めて機械的であり,周波数によっては耳障りである.そこで,倍音などを組み合わせることにより,ピアノ音やギター音などの音色を再現するようなプログラムに改良する. また,現状はモノラル出力となっているが,ステレオ出力にし,かつ,星の左右方向の検出場所に応じて,左右のスピーカーから出力される音量を制御すれば,星空を立体的に感じてもらえる可能性がある.
以上のように研究を発展させ,視覚に障害のある人々が楽しく星空観測を行えるシステムの構築を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は,CCDを制御するために専用の小型PCを導入する予定であったが,試験段階のプログラムは,すでに本経費で購入したノート型PCで作成したため,未使用額が生じた.平成30年度に,最終的なプログラムを小型PCに移植する予定である.また,音声を出力するスピーカーは,実際に視覚に障害のある方からの意見を取り入れて選定した方が良いと判断したため,その分が次年度使用額として生じた.
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