研究実績の概要 |
本研究は,視覚に障がいのある人々に対して,天体観測を身近に感じてもらえることを目的とし,その達成のため,天体観測で得られる視覚情報を音声情報へと変換する観測システムの構築を実施した.具体的には,星の明るさを音量に,星の色を音階として出力することで,星空を音声として体感するシステムである. 前年度までの研究においては,焦点距離16mmとカラーCCDを用いて実際の星空を観測し,(1)撮像された星の自動検出,(2)星の光量取得,(3)星のR, G, B値の取得,および(4)音量・音階への変換ソフトウェア開発を実施した.(1),(2)は,気球実験で培われたスターカメラ技術を流用した.(3)においては,RGB値の内,BとRの比が星のスペクトル型(=星の温度)に対して最も良い指標となることが明らかとなり,この比の値に基づき出力する音階を決定した.(4)において,本研究では星の光量を音量に変えるため,同じ明るさで色の異なる2つの星を比べた 時,できる限り同じ音量を出力することが望ましい.しかしながら,人の聴覚は音の周波数によって感度が異なるため,物理的に同じ音圧であっても,感じる音量(ラウドネス)が異なることが問題となった.そこで,本システムが出力する音階の範囲として,ISO226:2003の等ラウドネス曲線に従い,同じ音圧に対するラウドネスの変化が少なくなる500~1500Hzの音に制限した. 以上のようなハードウェア・ソフトウェアを用いて,実際に星空観測を行なった.二人でペアを作り,一方が目を閉じ(以下A),もう片方(以下B)が観測のサポート役とした.CCDが取得した星空を画面に映し出し,検出された星の明るさ順にシステムが出力する音声情報に従って,BがAの手を取って画面上の星位置をガイドした.これにより,天空上における星座の配置と,それを構成する星情報を体感できることがわかった.
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