新たに開発した「簡易凍結徒手切片法」を用いて、高等学校生物で、動物組織の観察を伴う新規の実習を開発し、生物が知識に偏ることなく「動物・生命そのものに立脚し 、実感を伴う学習」となるようにする。実験動物は広く哺乳類マウスが用いられてきたが、「動物愛護管理法の改正」から生命系の大学を別にして、哺乳類のマウスや爬虫類・鳥類など有羊膜類を用いた実験は簡単に実施できない。H25~H27年度の科研費で、様々な動物を用いマウスに劣らない組織実験が開発できた。そこで、本科研費では、生物にとって重要な細胞分裂を組織的に観察する実験として、マウスの代替動物として、アフリカツメガエル、キンギョが適用できるか検討した。ブロモデオキシウリジン(BrdU)、抗BrdU抗体を用い、学校に設置される生物顕微鏡で観察できる実験とした。その結果、アフリカツメガエル幼生の変態期(st.54)、発達中の後肢には多数の分裂細胞が含まれていることがわかった。指原基内は褐色を呈した細胞で満たされており、それらの染色状況もマウスの小腸や精巣の陽性細胞と変わりはないことから、本実験法が両生類でも適用でき、マウスの代替動物となることがわかった。さらに、マウスでは、小腸上皮細胞の分裂細胞は、柔毛底部のクリプト付近から活発に生じるが、両生類や魚類では小腸襞(柔毛を形成していない)に散在していた。両生類の精巣では、分裂細胞はクラスター状にシストを形成し、マウスと大きく異なっていた。また、本手法はミミズには適用できなかった。 これまで様々な動物の組織を観察する実験例を示してきた。本報告では細胞分裂という生物に重要な現象も観察できる実験を示した。これら観察対象の拡大や新しい実験手法の開発、学校で扱いやすい実験動物の検討は、生徒が調べる活動の機会を広げ、課題設定を容易にすることで、「理数探求基礎」「理数探求」の充実に資すると考える。
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